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ウチナー御願ばなし<どっこい火の神は生きている。>

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 沖縄独自の御願行事、火ぬ神(ヒヌカン)や屋敷の御願などはやり方や意味が分からなくて悩んでいる人は多いはず。その由来や実践方法まで、沖縄の歴史、民族に詳しい座間味栄議さんに教えてもらい、正しい知識を身につけよう!

どっこい火の神は生きている。

朝明けの太陽は、火の神信仰の根源である(写真提供/むぎ社)
朝明けの太陽は、火の神信仰の根源である(写真提供/むぎ社)

祈りの続く限り

 どっこい火の神は生きている。
 書き出しに面食らう読者もおられようが、火の神信仰の現状に対する、筆者の認識である。
 ある本土の学者が、火の神の認知度を調べるために沖縄の若い女性を対象にアンケートを行った。
 結果、認知度が予想外に低かったことから、火の神信仰は衰弱期に入っていると結論づけた。
 むろん、その結論を無条件に肯定するつもりなど毛頭ない。ただ将来、一家の主婦として火の神を司祭する役目が期待される若い女性の中に、火の神を知らないとする者が存外にいたというのは、やはり寂しい。
 さりながら、火の神を司祭するのは一家の主婦とはいえ、オバァが健在のうちは、オバァであり、若い主婦や娘ではない。それだから、若い女性が火の神に対する知識が十分でなくても、特段不思議なことではない。そのことをただちに、火の神信仰の盛衰に結びつけて考えるのは、いささか短絡に過ぎるのではないだろうか。
若い女性もやがては主婦となり一家を支え、歳月を重ねてオバァとなり家族を守護する存在となる。そうなると、祖母や母がそうしたように、火の神の前に正座して、家族の健康と家庭の安寧(あんねい)を願って祈りを奉(ささ)げるようになる。そしてウヤファーフジ(祖先)とクヮウマガ(子孫)をつなぎ、家族を守るという沖縄女性の強固な信仰心が芽生えてくるのである。
 こうしたオバァの祈りが続く限り「どっこい火の神は生きている」という思いを強くする。

家人のよりどころ

 家の中央に祀(まつ)られ、不動の位置を占める「トートーメー」。一方で、台所の隅っこに追いやられているかのようにも見える「火の神」。こうした祀り方の構図からも「トートーメー信仰に圧倒された火の神信仰」という見方も当然出てこよう。
 しかし、イーフェー(位牌(いはい))を通して死者の霊を偲び、供養するという位牌祭祀が生まれる以前の沖縄で、唯一の家の守り神といえば火の神であった。それだから家庭内のもろもろのこと、子どもの誕生、結婚、旅立ち、家の新築などなど、何かにつけて火の神への拝みを優先させてきたのだろう。
 「何をさておいても、まずは火の神への報告を」というオバァの心持ちは変わらない。まさに、家人の心のよりどころとなっているのである。
 古代沖縄人の、太陽神に対する深い信仰心に由来するものと考えられている「火の神信仰」が揺らぐことはない。

1349hp_uchinaugan02~参考文献~
「沖縄の祝い事便利帳(むぎ社)」。儀礼を通して見た、沖縄の祝い事の風習を優しくまとめた便利帳。時代とともに消えたものから伝統の中で生き続けたものまで、すべてが沖縄的で面白い


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執筆/座間味栄議
ざまみ・えいぎ 沖縄県の歴史・民俗を中心に地方出版物を刊行する出版社「むぎ社」を主宰。主な著作に「トートーメーQ&A」「沖縄の拝所」「オバァが拝む 火の神と屋敷の御願」など。御願行事についてやさしく伝えるサイト「御願ドットコム」も運営する。http://www.ugwan.com/


毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざにて第2週に掲載中<第1349号2013年5月9日掲載>

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