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お役立ちコラム

あーと事始め 舞台・芸術鑑賞を愉しむ<組踊り>

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組 踊

 「興味はあるけどちょっと敷居が高そう…」と二の足を踏みがちな舞台や芸術の世界をひもとき、鑑賞のポイントや楽しみ方を紹介する。1回目は、沖縄を代表する伝統芸能で、昨年、ユネスコの世界無形文化遺産にも登録された「組踊」を取り上げる。組踊の魅力を分かりやすく伝えている若手実演家「子の会」のメンバーに特徴と見所を教えてもらった。

組踊「執心鐘入」の一場面。鬼女に姿を変えた宿の女(左)を法力で鎮めようと、寺の座主と小僧たちは戦いを挑む=北谷ニライセンター
組踊「執心鐘入」の一場面。鬼女に姿を変えた宿の女(左)を法力で鎮めようと、寺の座主と小僧たちは戦いを挑む=北谷ニライセンター

音楽で人物の心情を読む

寺に駆け込んだ中城若松(左)は、座主に助けを求める
寺に駆け込んだ中城若松(左)は、座主に助けを求める

 組踊は、歌三線(音楽)、唱え(セリフ)、踊り(琉球舞踊)の3つの要素で構成された歌舞劇。独特の旋律の唱えと琉球古典音楽に乗せ、踊りとともに物語が展開する。
 子の会事務局の佐辺良和さんは「決まった様式(型)の中で演技を行う組踊では、集中力と凝縮された細かい演技が必要とされます。演じ手である立方(たちかた)の所作や踊り、音楽を担う地謡(じうてー)の歌三線の響きは余韻があり、ぜい沢な雰囲気があると思います」と魅力を語る。
 特徴的なのは、立方と地謡の関係。「組踊は『抑制の美』と言われ、立方が表情で喜怒哀楽を表現することはなく、立方の気持ちを代弁するのが地謡の奏でる音楽です。立方の動きが少ないときはジッと音楽に耳を傾けて、その気持ちを想像してみてください」と佐辺さん。想像力は、組踊を楽しむ大事なエッセンスになる。
 地謡が歌っているとき、立方の動きが止まっていることも多いが、「歌の間のちょっとした動き、例えば、顔を下げる所作などに大きな意味がある。そこに込められた思いをお見逃しなく」と、同会メンバーの金城真次さんは話す。立方と地謡のコンビネーションが舞台に深みを与える。
 また、紅型幕をバックに背景が変わらないため、舞台の展開にはいくつかの約束事がある。演目の始まりと終わりの合図は拍子木の音。舞台を一周したり横切ったりすることで、場面が変わったことを意味する。これらを踏まえて見れば物語の流れも理解しやすい。

演じ手(立方)の気持ちを歌と音楽(地謡)が代弁

若松が身を隠す鐘を見張る小僧たちと宿の女のやりとりは、緊迫感の中にも笑いが混じる
若松が身を隠す鐘を見張る小僧たちと宿の女のやりとりは、緊迫感の中にも笑いが混じる

 観賞したのは、人気の高い「執心鐘入」。恋焦がれるあまり理性を失い、鬼へと豹変する女の情念を描いた作品だ。
 仕事で首里に向かう美少年・中城若松は、山中の家に一夜の宿を貸りる。若松に恋心を抱き、語り合いたい宿の女と若松とのやりとりが最初の見所。
 ためらいながらも意を決して寝ている若松に声を掛ける宿の女の様子は、まさに恋する乙女。しかし、若松はまったく興味を示さず、険悪なムードに。女に恐怖を感じ逃げ出す若松。激しくなる笛と太鼓の音に、緊張感が高まる。
 末吉の寺に駆け込んだ若松は座主(寺の主)助けを求め、鐘に身を隠す。その鐘の見張りを命じられた小僧たちのやりとりはコミカルで、笑いを誘う。
 寺にたどり着いたものの若松に会えない宿の女は、鬼女へと姿を変える。法力で鎮めようとする座主たちとの戦いは見もの。笛と太鼓が激しく鳴り響き、決戦を盛り上げる。
 舞台を観賞した定岡遊歩くん(中2)は、「演劇をやっているのですが、自分は動き過ぎる方。組踊は無駄な動きがなく、足さばきもすごい」と語った。金森喜祐くん(小5)は、「舞台に何も置かれていないのに、場面展開が分かるのはすごい」と感想を話してくれた。

「忠義」「孝行」がテーマの中心 ときには恋愛ものも

組踊は現在、約70作品が確認されている。「『花売りの縁』は家族愛、『手水の縁』は男女の恋愛、『二童敵討』や『万歳敵討』は親の仇討ちと、作品ごとにテーマが異なります」と金城さん。作品には、親や主君の「仇討ち」をテーマにしたものが多いという。
 初心者にお勧めの作品を聞いたところ、「起承転結がはっきりしていて、最後の盛り上がりもある『執心鐘入』や『二童敵討』は、子どもも大人も楽しめる作品だと思う」と入嵩西諭さん。
 佐辺さんは「『雪払い』は、継母いじめがテーマ。沖縄なのに雪? と思われるかもしれませんが、登場人物の心と雪の冷たさがリンクしていきます。雪が降るという、組踊では少ない舞台効果もあるので、初めてでも楽しめる作品だと思います」と話す。
 組踊で描かれるのは、現代にも通じる普遍的なテーマが多い。関心のある内容の演目から足を運んでみては。


【What’s】成り立ち

 組踊は、中国からの使者・冊封使をもてなすために玉城朝薫によって創作され、1719年の尚敬王の冊封のとき初めて上演され、好評を博したと言われている。
 朝薫はそれまでの琉球芸能を基に、能や狂言、歌舞伎といった大和芸能、中国の演劇を参考にして、琉球に残る古い伝説や歴史などを題材に、「二童敵討(にどぅてぃちうち)」「執心鐘入(しゅうしんかにいり)」「銘苅子(めかるしー)」「女物狂(うんなむぬぐるい)」「孝行の巻」の5つを作り出した。これらは「朝薫の5番」と呼ばれ、現在でも人気の演目だ。
 組踊は、廃藩置県による琉球王国の崩壊や沖縄戦など伝承が危ぶまれた時期もあったが、それを乗り越え現代まで継承されている。1972年に国の重要無形文化財に指定され、2003年には、組踊初の人間国宝が誕生。そして2010年11月にはユネスコの無形文化遺産代表一覧に記載された。近年では、新作組踊も多く発表されている。

【Check】約束ごと

1241hp_atkotoha004 紅型幕一枚を背景に演じられる組踊では、舞台の展開にいくつかの約束事がある。覚えておこう!
・舞台の始まりと終わりは、拍子木の音で合図。
・登場人物は、出てきたらまず自分の名前を名乗り、これからやることを語る。
・登場人物が舞台を一周したり横切ったりすると、場面が変わったことを意味する。
★ちなみに…、写真のように、手に花笠を持っているときは、「旅(道行)」をしていることを示す。

【Close up】地謡

1241hp_atkotoha005 組踊に欠かせないのが、琉球古典音楽。「三線」「箏」「笛」「胡弓」「太鼓」の5つの楽器で演奏され、その担い手を地謡(じうてー)と呼ぶ。
 三線は登場人物の気持ちや目的地までの道のり、風景を歌で表現する中心的な存在。そのほかの楽器は、主に三線の伴奏として演奏され、場面によっては効果音も担当する。
 子の会メンバーで地謡の入嵩西諭さんは、「立方の心情を歌うときは、独唱も多い。歌い手一人ひとりの個性や魅力が楽しめるのも組踊の魅力。また、立方によって、少しずつ間の取り方も違うので、舞台上では目に見えないやり取りがある。お互いがいい具合の緊張感で、間や呼吸を合わせていく楽しみもある」と教えてくれた。


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「子の会」伝統の魅力伝える若手実演家

 沖縄伝統組踊「子の会(しーのかい)」は、国立劇場おきなわ組踊研修修了生で構成された団体。現在、1期生と2期生の19人が所属する。「多くの人に組踊の魅力を知ってもらいたい」と、県内の小中学校の芸術鑑賞会へ出演するほか、市町村でも組踊公演を開催、子どもたちへの体験型ワークショップなども行っている。また、各メンバーは、国立劇場おきなわの自主公演に出演するなど、活動の幅を広げている。

面白く見せる工夫あれこれ

3月21日に行われた「組踊で触れるうちなーぐち」ワークショップで、子どもたちにウチナーグチや琉歌を教える子の会のメンバーたち
2011年3月21日に行われた「組踊で触れるうちなーぐち」ワークショップで、子どもたちにウチナーグチや琉歌を教える子の会のメンバーたち

 2011年3月21日には、北谷町ニライセンターで行われた沖縄県主催のワークショップ「組踊で触れるうちなーぐち」の講師を務め、組踊「執心鐘入」を上演した。
 ワークショップには、北谷町内外から13人の小中学生が参加した。子の会会長の仲村逸夫さんと事務局の佐辺良和さんに、組踊独特の言い回しを教わって一人ひとり自己紹介した後は、組踊のセリフや音楽に使われるウチナーグチや琉歌に触れた。
 仲村さんは「日本語は母音が『あいうえお』の5つだけど、うちなーぐちは『あいうゐう(を)』なので基本的には母音3つです」と説明。手づくりの五十音表を使い、普段使っている言葉をウチナーグチに変換した。
 佐辺さんは「単語数個でも覚えれば、組踊の中でそのセリフが出てきたときに想像力を働かせる手がかりになる」と話す。
 子の会の舞台では、始まる前に演目の見所や組踊の約束事などを解説してくれる。また、舞台脇に字幕を設置するなど、ウチナーグチに不慣れな初心者でも楽しめる工夫がうれしい。
 小中高生向けには、「執心鐘入」や「二童敵討」を上演することが多いという。「どの演目をやるにしても、見る人に合わせて見せ方を工夫することが大事だと思う。始まる前にどんな説明をするか、ワークショップをやった方がいいのかなど、面白く見せられるかは、自分たちのやり方次第だと思う」と金城真次さん。佐辺さんは「僕らもまだ気づいていない部分や伝えきれていない部分があるので、もっと勉強して、技も磨きながら組踊の楽しさ、面白さを伝えていきたい」と語った。今後の活躍が楽しみだ。

組踊について教えてくれた、(左から)入嵩西諭さん、佐辺良和さん、金城真次さん
組踊について教えてくれた、(左から)入嵩西諭さん、佐辺良和さん、金城真次さん


(取材・編集:比嘉千賀子)
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざにて連載中<第1241号2011年4月7日に掲載しました>

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