川辺にマングローブ、遊歩道も
『都会に憩いの親水空間』

国場川~漫湖~那覇港までの河畔(那覇市)
第2回は、那覇市の南東部を流れる国場川の河口から真玉橋、漫湖、那覇港にいたる河畔(かはん)のエリア。都会でありながら、憩いの親水空間が広がっていて、散策してみると楽しい。島田潤さんに案内してもらった。
文・写真/島田 潤
(社)日本建築家協会沖縄支部・支部長
紹介したいスポットは、国道329号那覇東バイパスをとよみ大橋から明治橋交差点にかけてのルート、モノレールの駅だと、奥武山公園駅から壺川駅、旭橋駅にかけての沿線となります。その中でも、那覇大橋から明治橋に至る両川岸の景観に注目してみました。そこには、都会的な整備がされた水辺の空間があります。
上流から散策ガイドブック風に紹介しましょう。国場川と饒波川が合流する漫湖の北岸には漫湖公園があり、ジョギングコースとして市民に親しまれています(=写真3)。対岸にはラムサール条約に登録された漫湖のマングローブの林があります(=写真2)。
そして、もう少し下流に下ると北岸は中央郵便局や高層のマンション、ビルが立ち並ぶ都会の景観に移り、その横を奥武山公園から大きくカーブしたモノレールの高架が走ります(=写真1)。高架上の壺川駅に滑り込むモノレールの車両が、動きのある立体的な都市景観を演出します。
南岸は野球場、プール、陸上競技場、武道館など多くのスポーツ施設のある奥武山公園です(=写真4)。公園には2つの神社もあります。公園の川辺はラバーを敷いたジョギングコースや親水空間として整備されています(=写真5)。そこにはベンチもしつらえてあります。夕日に映えるビル群を眺めながら、川面をわたる風を感じるのも心地よいものです。
以前、と言っても40年も前の事になりますが、壺川にはべニヤ工場があり、川面には大きな丸太の原木がたくさん浮いていました。川岸は、製材所、工場、倉庫などが雑然と建つ街並みでした。ハーバービュークラブと呼ばれる米軍の将校クラブのある丘の上(現在はホテルが建っています)からは、那覇軍港に沈む夕日が眺められました。そのエリアが、先ほど紹介した水辺の都市景観に変ぼうしました。川辺を上手に開発した好例でしょう。
川幅の分だけ空間に広がりがあります。対岸の公園から眺める街のスカイラインや建物のファサードは、都市景観の重要な要素です。これから建設されるであろう建物にも十分に景観への配慮をしてほしいものです。また、変化に富んだ公園側の親水空間が風景を和ませてくれます。その親水空間は、今では明治橋交差点を越えて那覇港フェリーターミナルへと連続しています(=写真6)。
それが、通堂町をへて、今年の夏に開通予定の那覇西道路につながることを期待したいものです。実現すれば、総延長約4~5キロメートルの水辺空間の誕生です。
国場川と饒波川の上流に向かっての川岸の整備も必要でしょう。マングローブの林が眺められる親水空間があればすてきです。都市に緑の公園はあっても大きな水辺の空間となると、そうそう見当たりません。那覇市は日本全国でも数少ない、サンセットが望める街です。その地理的特性も最大限に生かした都市景観を創造したいものです。
川岸から河口そして海岸線へと、水辺の景観が連続して街並みが形成された美しい景観を持つ街となることを願います。





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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞にて連載<第1332号2011年6月24日に掲載しました>