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建築家と探す『地域の魅力』<備瀬集落のフクギ並木(本部町)> -4-

防風林や家と通りの距離感に知恵

『後世に残したい景観』

写真3/群生するフクギ並木。石垣とともに屋敷囲いとして使われていた
写真1/群生するフクギ並木。石垣とともに屋敷囲いとして使われていた

備瀬集落のフクギ並木(本部町)

 フクギが碁盤目状に群生し、並木をつくり出している本部町備瀬。集落の中を歩けば、緑陰の心地よさとともに、防風林としての役目や、屋敷と通りにほど良い距離感を生む先人の知恵が見えてくる。松山喜治さん((株)国建・専務取締役)に案内してもらった。

文・写真/松山 喜治
(社)日本建築家協会沖縄支部

写真2/備瀬集落の遠景
写真2/備瀬集落の遠景

 備瀬集落は海洋博公園の北側に位置し(写真2)、近年、公園を訪れる観光客が増えると同時に、広く知られるようになっています。
 私自身、三十数年前にこの場所を訪れ、周囲の景観とは違う風景に感動した経験があります。最近、その時以来に訪れましたが、以前と変わらぬ元気なフクギ並木と、それにすっぽり埋もれた住戸のコントラストが気持ちよく感じられました。しかし、瓦屋根の木造住宅が陸屋根の鉄筋コンクリート住宅に建て替えられ、風景に馴染まない外観が見られるのはちょっと残念です。景観に配慮した住宅が望まれるところです。
 フクギを屋敷林、防風林として活用した集落づくりは県内に多くみられます。伊是名村の銘苅家周辺のフクギ並木、久米島町仲里の美らフクギ、渡名喜村の集落とフクギ並木、石垣市内の伝統住居周りのフクギ並木などが有名ですが、備瀬集落のフクギ並木が群生した景観は別格です。最近はフクギが街路樹として活用されているのを見かけますが、その使用目的や緑陰の具合を考えると、検討を要するのではないでしょうか。
 備瀬集落のフクギ並木は碁盤目状に整備された区画に沿ってフクギが群生し、夏の太陽の光を葉が受け止め、通りに木陰をつくっています(写真1)。そのフクギの木々の間を通り抜ける涼しい風がとても気持ちよく感じられます。住戸の庭先の木陰にハンモックをつり下げ昼寝をするのもいいし、縁側に寝転がって好きな本を読むと楽しく過ごせそうです。
 通りを歩く人と、住戸で暮らす人の中庭をはさんだ適度な距離感(写真3)と、木々の間から垣間見える微妙なプライバシー感は絶妙です。フクギ並木のトンネル(写真4)を散歩しながら浜辺に向かうと、青い海の先に伊江島タッチューが見える風景(写真5)は、この地ならではのものだと思います。
 近年は、大学の研究者が備瀬集落についてその歴史的背景や住民との関係、習俗などについて研究されています。また、本部町役場の皆さんと住民の方々が勉強会や協議会を開き、他県の事例視察をしながら、美しい景観づくりのための積極的な活動も行なわれています。
 本部町は国の景観法制定を受けて、町独自の条例を制定し運用を開始しています。その中で備瀬集落を景観形成重点地区として取り上げ、建築物の新築や増築、改築や移転、外観を変更することとなる修繕、模様替えまたは色彩の変更などについて詳細な基準をつくり、良好な景観形成のために努めています。
 備瀬集落が形成されて400年といわれていますが、長い時間の中で守り続けてきた美しい集落景観とフクギ並木を本部町、沖縄県の財産として、後世に引き継いでいきたいものです。

写真1/通りから見える庭先を挟んだ住戸のたたずまい
写真1/通りから見える庭先を挟んだ住戸のたたずまい
写真4/フクギ並木のトンネルから浜辺へつながる小道
写真4/フクギ並木のトンネルから浜辺へつながる小道
写真5/海岸線から伊江島タッチューを望む
写真5/海岸線から伊江島タッチューを望む

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞にて連載<第1345号2011年9月23日に掲載しました>

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