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建築家と探す『地域の魅力』<聖クララ教会、御殿山・親川(与那原町)> -6-

霊泉・親川は憩いの広場に

『丘の上の教会が原風景』

写真1/礼拝堂。洗練されたデザインの中に、張り詰めた緊張感が宿る。幼いころ中に入ると、その雰囲気からおとなしくなったものだ。信者が施工に携わったそうで、ものづくりの痕跡が感じ取れる
写真1/礼拝堂。洗練されたデザインの中に、張り詰めた緊張感が宿る。幼いころ中に入ると、その雰囲気からおとなしくなったものだ。信者が施工に携わったそうで、ものづくりの痕跡が感じ取れる

聖クララ教会、御殿山・親川(与那原町)

 与那原町の聖クララ教会は、今回の執筆者・當間卓氏((株)泉設計代表取締役)にとって、古里の原風景になっている。同じく町内にある御殿山や親川は、東御廻(あがりうまーい)りにちなむ名所として、琉球王国にゆかりが深い。同氏が今もパワーをもらっているという、これらのスポットをたどった。

文・写真/當間 卓
(社)日本建築家協会沖縄支部・副支部長

 誰もが幼いころ鮮明に記憶しているシーンがあると思う。湾状に続く美しい砂浜と、その湾に沿って連なる緑の生い茂った森々に抱かれた小さな町。私はそこで育った。
 幼いころの遊びといえば、海岸に出て魚や貝を捕ってその場で食したり、冒険や肝試しと称して森に出かけ、頂上を目指したものだった。今から約40年前の話であるから、建物はコンクリート造のものも少なく、木造の瓦屋根や藁葺(わらぶ)き屋根の住宅も多く残っていた。
 そんな風景の中、町の中心を貫くメーン道路の軸線上の小高い丘の上に、大きな教会が建っていた(写真2)。少なくとも幼いころは大きく見えた。その教会は大きな鳥が羽を広げたような形をしていて、大きなガラス面が特徴的なモダンで近代的(写真3)。とにかく美しいフォルムをしていた。教会を週に2、3度訪れるたびに、子どもながらに不思議な感覚を覚えたものである。
 太陽の下にいる時よりも開放的であり、室内を通り抜ける風が心地よく感じる。礼拝堂から見下ろす町の全景は、森の緑と赤瓦や藁葺き屋根がうまくマッチし、雲の切れ間から差す陽光に海面がきらきらと輝く、神々しい風景であった。礼拝堂に居たからそう感じたのかもしれない。堂内は、手の跡が残る施工のレベルではあるが、それより洗練されたスケール感と張り詰めた空気が印象的だ(写真1)
 礼拝席には畳が敷き詰めてあり、それが様式のアンバランスという風にはまったく感じない。むしろ沖縄の気候風土を取り入れながら、時の流れや様式・権威にとらわれない、ユニバーサルな建築を目指したつくり手の意志を感じることができる。これが初めて出合った建築・聖クララ教会であり、建築の原風景である。この教会は、近代建築の記録と保存を目的とする世界的学術組織・ドコモモの日本100選に沖縄から選ばれた。
 「東御廻り」にまつわる与那原町の名所をたどる。東御廻りは、創造神アマミキヨがニライカナイから渡来して住み着いたと伝えられる14聖地を巡礼する行事。首里の園比屋武御嶽(そのひゃんうたき)から始まり、与那原町は御殿山(うどぅんやま)(写真4)と親川(えーがー)(写真6)の2カ所、南城市に斎場御嶽(せーふぁーうたき)、玉城グスクなど11カ所がある。御殿山は、天女が舞い降りた場所として、琉球王国最高神女・聞得大君(きこえおおきみ)の即位儀礼には聖水の儀式「御水撫で(うびなでぃ)」を行った場所である。
 親川は、御水撫でや東御廻りの御用水としてくみ上げられた霊泉で、御殿山に舞い降りた天女が御子を出産したときに、親川の水を産水に使ったと伝えられている、王府と密着した聖地である。与那原の人々にとっても古くからの貴重な飲料水や生活用水であり、現在ではガジュマルやデイゴに囲まれた親川広場として整備され、人々の憩いの場となっている。
 現在でも、生まれ育った与那原の地から多くのパワーをもらっている。

写真2/与那原交差点の背後、丘の上に建つ聖クララ教会
写真2/与那原交差点の背後、丘の上に建つ聖クララ教会
写真3/聖クララ教会の正面外観。ステンドガラスと日除けブロックが特徴
写真3/聖クララ教会の正面外観。ステンドガラスと日除けブロックが特徴
写真4/与那原小学校向かい、青少年広場奥にある御殿山の拝所
写真4/与那原小学校向かい、青少年広場奥にある御殿山の拝所
写真5/与那原町内の路地の交差点に点在する愛らしい狛犬。泡石をノミで削って造られている
写真5/与那原町内の路地の交差点に点在する愛らしい狛犬。泡石をノミで削って造られている
写真6/与那原町の中心商店街の親川通り沿いにあり、綱曳史料館に隣接する親川の拝所
写真6/与那原町の中心商店街の親川通り沿いにあり、綱曳史料館に隣接する親川の拝所

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞にて連載<第1354号2011年11月25日に掲載しました>

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