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木霊のひびく家々<霊宿した「木」の家づくり>

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『霊宿した「木」の家づくり』

木霊が宿る市房山神社の御神木「一房杉(いちふさすぎ)」(熊本県球磨郡水上村)。樹齢800~1000年、樹高約40m。前に立つと言葉も出ないほど圧倒される。日本人の心の中では、畏れは慎みに変化する
木霊が宿る市房山神社の御神木「一房杉(いちふさすぎ)」(熊本県球磨郡水上村)。樹齢800~1000年、樹高約40m。前に立つと言葉も出ないほど圧倒される。日本人の心の中では、畏れは慎みに変化する

イキモノの中で暮らす

 伝統的な木造住宅は奥が深い。今回は、木が育った山に思いをはせ、森の国・日本、森の民・日本人が持つ「思いやり」や「つつましさ」がどこから、どのように生まれるのかを探ってみたい。

(執筆・後藤道雄 社会的企業 じねん(自然)組 一級建築士事務所 代表)

幹周り8mを越える杉の木。巨木に限らず、小さな木にも木霊が宿る
幹周り8mを越える杉の木。巨木に限らず、小さな木にも木霊が宿る
建設地の山に入るときは山師が山の神に、木を切るときは空師(そらし)が木霊に、畏敬の念を込めて手を合わせる(宮崎県綾町)
建設地の山に入るときは山師が山の神に、木を切るときは空師(そらし)が木霊に、畏敬の念を込めて手を合わせる(宮崎県綾町)
木霊と共存する住まい。畏れと慎みが日本人の心を育てる。自宅兼環境教育施設「ぬちゆるやー」(北中城村荻道)
木霊と共存する住まい。畏れと慎みが日本人の心を育てる。自宅兼環境教育施設「ぬちゆるやー」(北中城村荻道)

 日本の木造文化は縄文時代までさかのぼります。漢字の「木」は象形文字で、漢民族は「木」を形で捉えました。それは木を使った漢字、例えば、休む、林、森などに見てとれます。
 しかし、古来の日本語では、「キ」は「イキル」を意味しました。「イキル」の前の「イ」と「ル」が省かれていますが、日本民族は、「イキモノ」と捉えたところに民族の感受性の違いをみることができます。

慎み生む森への畏れ

 「東京砂漠」と呼ばれるように、都会の生物量は森に比べると雲泥の差です。無数の生きものと魑魅魍魎(ちみもうりょう)が共存する森は、物理的には生物循環が可能な閉鎖型の生態系が維持できる貴重な場所です。酸素を供給し、水を生み出します。一方で、森は深ければ深いほど人々に畏(おそ)れられます。
 畏れは、慎みにつながります。日本人は非常時の混乱している時でも冷静沈着、略奪や暴動が生まれない。日常は礼儀正しく、腹は八分目。これらは世界の人々が認めるところです。どこかでまだ、森(自然)に畏れを感じているからでしょう。
 ただ、戦後の機械文明の進展、規格社会の中で木もイキモノではなく、無機質なモノとして捉えられ、見た目は木でも人工的に乾燥や接着処理、あるいは薬物を注入され、木の「霊(たましい)」は抜けてしまいました。
 荒廃した森、モノ化した木をみると、森への畏敬の念が薄れ、自然をどうにでもコントロールしようとする人間中心の考えと、わがままで身勝手な自己中心的な考えが生み出す、不安な現代社会とが重なってしまいます。

自然への感謝で育つ心

 すべてのモノには命があり、命には神様がすむという「森羅万象神々宿る」の観念はまだ生きています。
 山には山の神、水には水神さん、火には火の神(ひぬかん)、そして木には木霊(こだま)が存在します。だから、山に入るときも木を切るときも、山の神様や木霊に許しを乞うのです。
 この他にも、木造住宅を建てる時はたくさんの神事があり、神様を通して自然への感謝やお願いをします。面倒なことですが裏を返せば、日本人の多くは木霊のすむ自然に憧れ、一方で自然への畏れを神様に委ねて、安心して暮らしたいのでしょう。
 木霊を宿した木で組み上げられた家での暮らしは、きっとおおらかでやさしい子どもを育てると確信しています。(一級建築士・環境カウンセラー)

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 この連載は、一級建築士で林間学校「おきなわ環境塾」も主宰する後藤道雄さんが、伝統的な木造住宅と木や森、水を絡めた、自然とつながる家づくりを語ります。


後藤道雄さん

<プロフィル>
ごとう・みちお
1951年、熊本市出身。木造歴45年、伝統構法による人格形成がモットー。日本建築士会連合会賞 奨励賞、住宅建築大賞、木材活用コンクール優秀賞など受賞

社会的企業 じねん(自然)組 一級建築士事務所
http://nuchiyuruya.com/


※写真をクリックすると拡大して見ることができます。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞にて連載<第1483号2014年5月30日に掲載しました>

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