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建築家と探す『地域の魅力』<読谷山焼窯周辺(やちむんの里)―読谷村座喜味> -7-

風土に溶け合う建築の原点

『自力でつくった陶芸村』

写真1/入り口にある共同売店(4氏の作品が展示販売されている)。自力で建設された建物の中では精度が高く、洗練された形をもつ
写真1/入り口にある共同売店(4氏の作品が展示販売されている)。自力で建設された建物の中では精度が高く、洗練された形をもつ

読谷山焼窯周辺(やちむんの里)―読谷村座喜味

 読谷村座喜味の読谷山焼窯の周辺は、4人の陶芸家と建築家の手で造られた。戦前の赤瓦や杉の電柱、石積みの壁から成る建築群に建築家・本庄正之氏((有)アトリエ・ノア代表取締役)は、地域でのものづくりの原点や風土に融合する建築の在り方を思い起こす。

(文・写真/本庄 正之((社)日本建築家協会沖縄支部会員))

写真2/共同売店の後方にある登り窯。9連房を持ち、そばには薪小屋が設けられている
写真2/共同売店の後方にある登り窯。9連房を持ち、そばには薪小屋が設けられている
写真3/ムカデ工法の小屋組み。屋根から伸びた電柱が地面に埋めた巨石で支えられている
写真3/ムカデ工法の小屋組み。屋根から伸びた電柱が地面に埋めた巨石で支えられている
写真4/石積みの壁と電柱再生材の木材と再生瓦で造られた陶房
写真4/石積みの壁と電柱再生材の木材と再生瓦で造られた陶房
写真5/うす暗く時間を感じさせる独特な雰囲気の陶房内部
写真5/うす暗く時間を感じさせる独特な雰囲気の陶房内部
写真6/当時住居として使われていた建物の周りには、無造作に陶器が置いてある。緑の中の静かで落ち着いた場所になっている
写真6/当時住居として使われていた建物の周りには、無造作に陶器が置いてある。緑の中の静かで落ち着いた場所になっている

 初めてこの地を訪れたのは26年前。年末の寒風吹きすさむ日であった。前日の雨でぬかるんだ砂利道をトボトボ歩いて行くと、赤土に建ち上がる野石積みと赤瓦屋根に廃材利用の電柱杉丸太と石積みの壁というシンプルな構成の建築郡が現れ、その迫力に圧倒された。
 その建築郡は、建築家の故・洲鎌朝夫氏と4人の陶工(金城明光氏、玉元輝政氏、山田真満氏、大嶺實清氏)によって自力で建設された。共同窯と共同売店を中心に、入り口側から金城氏・玉元氏・山田氏・大嶺氏の陶工房からなる陶芸村だ。最近では、周辺に若手陶芸家が集まって新たな陶芸村へと増殖しているが、開拓時の4人の陶芸家による苦難の陶芸村づくりの精神は、今も胸に響く。地域でのものづくりの原点や風土に融合する建築の在り方を、私たちに思い起こさせる建築として紹介したい。
 1980年、陶工たちの窯づくりは、3年におよぶ廃屋の赤瓦収集と古電柱の購入・集積の後、自力での開拓から始まった。野石積みによる造成を行いつつ拓(ひら)かれた進入路の前に真っ先に現れるのが、共同売店だ(写真1)。建築郡の中では最後に造られた建物ということもあり、施工の精度もかなり良くなって見える。軒先を低く抑え、穴倉感をイメージしてある。
 その背後にあるのが、薪(まき)置き場を控えた共同釜(写真2)。9室連房の窯を持つ登り窯は、陶房と同じ石・電柱・瓦の構成で、その素材が醸し出す存在感は圧巻だ。背後からのシルエットもまた美しい。
 共同釜の右手側に4棟の陶工房が建つ。一番手前の金城陶房はムカデ工法(そのように呼ばれている)で、屋根の合掌の先端が地面にまで延び、大石で受けている(写真3)。ひとつ置きの山田陶房も同じ工法で、意図的に交互に違えたようだ。奥の大嶺陶房と2番手前の玉元陶房は切り妻の合掌造りになっている(写真4)
 すべての建物で共通しているのが、屋根の瓦に古い戦前の瓦(ろくろ瓦)が使われていること。民家解体時にもらい受け収集した瓦はつなぎが合わず、自力での施工に苦労したようだ。陶房内は煙に蒸されて黒くなった再生木材が薄暗さと相まって独特の雰囲気を醸しだしている(写真5)
 瓦の漆喰(しっくい)は、雨漏りを防ぐため今でも7、8年ごとに塗り替えている。屋根の小屋組みは電柱の廃品を利用している。窓枠や扉もすべて電柱の廃品再生品で製作され、逆にその質感が、全体の雰囲気を醸し出している。読谷村内の砕石所から運び込まれた多くの石材は、建物の外壁の石積みのみならず、造成や道路に用いられている。
 日々使いながら進化している陶房は、入植当時生活していた建物が今も良い雰囲気で使われ続けている(写真6)。あちらこちらに収集した瓦や古材が集積されていて、入植当時の面影が見られた気がした。
 当時を思い起こすと、沖縄の原風景を再認識させられた建築郡。今もその印象は私の中に生きている。


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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞「第1358号2011年12月23日紙面から再掲載」

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