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お役立ちコラム

木霊のひびく家々<時空超えてよみがえる>

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『時空超えてよみがえる』

ホールの床はイタジイ、壁と天井はリュウキュウマツ。トイレ床はイタジイ、壁と天井はクスノキで、床柱にはイジュの木を使った沖縄の木霊が響く家(沖縄市諸見里)
ホールの床はイタジイ、壁と天井はリュウキュウマツ。トイレ床はイタジイ、壁と天井はクスノキで、床柱にはイジュの木を使った沖縄の木霊が響く家(沖縄市諸見里)

木材が運ぶ地域の息吹

 日本古来の木造住宅には、木霊が存在すると言われます。一軒に使われる木材の産地はさまざま。柱や梁(はり)、床・壁・天井材、建具などに使われる木は、生まれ育った場所の環境を想像させますが、同時にその地域の木霊も運んでくれます。

(執筆・後藤道雄 社会的企業 じねん(自然)組 一級建築士事務所 代表)

よみがえる木霊もいる。50年以上使われていた天井板(秋田杉)を、流し台の扉で再利用。
よみがえる木霊もいる。50年以上使われていた天井板(秋田杉)を、流し台の扉で再利用。
仏壇に使われていたかもいや引き出し、欄間も再生。「年をとらない木霊」はまたさらに50年、100年と家を見守る
仏壇に使われていたかもいや引き出し、欄間も再生。「年をとらない木霊」はまたさらに50年、100年と家を見守る
「龍が昇る家」。想像上の生きものが守護神として家を守る(北中城村仲順)
「龍が昇る家」。想像上の生きものが守護神として家を守る(北中城村仲順)
笑う鬼瓦(熊本県人吉市)
笑う鬼瓦(熊本県人吉市)

 木霊が響きあう家は、木が育った山だけでなく、山から湧きいでる水や地域の自然にまで思いをはせることができます。木材は高い木に登り伐採する空師(そらし)や製材所、大工とも有機的につながっているので、思いのすそ野は広くて深く、家への愛着もひとしおです。
 やんばるの森で育ったイタジイやリュウキュウマツ、クスノキの板を内装に使った家では、亜熱帯の沖縄の香りを家中に醸し出します。家のどこかに森の精霊・キジムナーがいるようです。
 沖縄では九州の木材が使われていますが、九州にもそれぞれの地域の木霊が存在します。例えば、熊本県の球磨川流域には「やまんたろ」がいます。

50年余の時を経て

 地域独自の木霊もいますが、時間を超えてよみがえる木霊もいます。
 先日竣工した住宅では、50年以上たった家をきれいに解体し、使われていた天井板や欄間(らんま)、柱、仏壇などを水洗いし、表面を仕上げて再利用しました。再び生き返った木々は色つやがよく、イキイキして喜んでいるようです。きっと、木にすむ木霊が眠りから覚めたのでしょう。つまり、「年をとらない木霊」が時間を超えてよみがえったのです。

木霊の仲間たち

 木霊と同じように目には見えませんが、精霊や魂を具現化した想像上の生きものもいます。沖縄の屋根や門柱には「シーサー」(獅子)が鎮座します。
 お城や神社仏閣などには鯱(しゃち)が棟に上がり、栃木県の日光東照宮には麒麟(きりん)の彫刻があります。本土の屋根には大小さまざまな鬼瓦がにらみを利かしています。本来鬼瓦は、魔よけなので相手を寄せ付けない怖い顔をしているものですが、中には「笑う鬼瓦」もいます。いずれも架空の生きもので建て主や鬼瓦製作者の思いが表現されています。
 厄よけや魔よけ、守護神として、大切な家に精霊をまつるのは先祖や自然に対する畏敬の念の表れだと思われます。これが一軒の家から地域に広がると、地域全体にこだまが響くのではないかと考えます。
 山に向かって、「ヤッホー!!」と叫べば、「ヤッホー!」と返ってきます。木霊は山びことも呼ばれます。声がこだまするのは、山の中に木霊がいて、その木霊が返しているとも考えられています。
 白い家並みが続く沖縄ですが、木霊が宿る家が増えれば、もしかしたら「ヤッホー!」と返ってくるかもしれません。
 人間に都合のいい価値観だけで暮らすのではなく、少し非科学、不合理ではあっても、鬼や龍、シーサーなど、木霊に似た仲間とともに暮らすと、なぜか心がなごみ、安心するのは日本人の精神文化かもしれません。木霊のすむ家が増えて地域全体が優しく、楽しいものになることを願います。
(一級建築士・環境カウンセラー)

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 この連載は、一級建築士で林間学校「おきなわ環境塾」も主宰する後藤道雄さんが、伝統的な木造住宅と木や森、水を絡めた、自然とつながる家づくりを語ります。


後藤道雄さん

<プロフィル>
ごとう・みちお
1951年、熊本市出身。木造歴45年、伝統構法による人格形成がモットー。日本建築士会連合会賞 奨励賞、住宅建築大賞、木材活用コンクール優秀賞など受賞

社会的企業 じねん(自然)組 一級建築士事務所
http://nuchiyuruya.com/


※写真をクリックすると拡大して見ることができます。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞にて連載<第1505号2014年10月31日に掲載しました>

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