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お役立ちコラム

木霊のひびく家々<文化生み育てる家づくり>

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-4- 最終回

『文化生み育てる家づくり』

森のような木組みの中に浮く心柱。台風や地震などの自然の力を吸収・分散する。自然に逆らわない木霊のすむ家づくりは、造り手、住み手に自然への感謝や調和・共生の意識を芽生えさせる(那覇市具志)
森のような木組みの中に浮く心柱。台風や地震などの自然の力を吸収・分散する。自然に逆らわない木霊のすむ家づくりは、造り手、住み手に自然への感謝や調和・共生の意識を芽生えさせる(那覇市具志)

木霊と寄り添う暮らし

 日本の伝統木造住宅は世界に誇る技術と文化を持ち合わせる。科学だけでは捉えきれない奥の深さの秘密には「木霊」の存在がある。木霊(命)を意識した暮らしは、節度と調和、つつましさに代表される日本の精神文化をよみがえらせる。

(執筆・後藤道雄 社会的企業 じねん(自然)組 一級建築士事務所 代表)

木霊は森から街へ。床面積あたりの木材使用量は、在来軸組工法の約3倍。量もさる事ながら、躯体に金物を使用しない手作りの伝統構法は木の性格を熟知して木材を使うので、まさしく「木の文化」(那覇市具志)
木霊は森から街へ。床面積あたりの木材使用量は、在来軸組工法の約3倍。量もさる事ながら、躯体に金物を使用しない手作りの伝統構法は木の性格を熟知して木材を使うので、まさしく「木の文化」(那覇市具志)

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棟梁(とうりょう)が作成する図板。墨つけ、手刻み、木組みの必需品で各階の床伏せ図、小屋伏せ図が重なる。世界に誇る日本の木造技術のシンボル。図板に描かれた木霊がすみそうな家が、その先に見える
棟梁(とうりょう)が作成する図板。墨つけ、手刻み、木組みの必需品で各階の床伏せ図、小屋伏せ図が重なる。世界に誇る日本の木造技術のシンボル。図板に描かれた木霊がすみそうな家が、その先に見える
子どもの成長を残した「背比べの柱」を再利用。「年をとらない木霊」はまたさらに50年、100年と住み手を見守る(北中城村仲順)
子どもの成長を残した「背比べの柱」を再利用。「年をとらない木霊」はまたさらに50年、100年と住み手を見守る(北中城村仲順)

木霊は人間の目には見えません。日本人の心の中にあって、時にはいましめ、時には希望を与えてくれます。木霊は木だけではなく手刻みして組み上げる家や木製建具にも宿りますが、その仲間は左官が漆喰(しっくい)で作る鏝絵(こてえ)、鬼師が作る鬼瓦、陶芸家の作るシーサーにも宿ります。
 共通するのは、自然素材を活用した精巧な手作り技術と職人魂です。どれも地域の自然や歴史を背景に持つ様式なので、「建築文化」と言えます。
 巨額を投じて建てる住宅には家族の希望を多々入れるので、どの家も愛着があるのは当然です。しかし、木霊の宿る家との違いは文化性の有無だと考えます。
 近年の家は快適で便利ですが、どこか冷たくて無機質な印象。木霊の宿る場所は見つからず、日本人の持つ精神文化を感じ取るには至らないようです。一方、魂が入った家は精神性が高く、古くなったからといってもなかなか壊せません。逆に歴史を重ねるほどいとおしくなります。

親子のような関係

 自然の木や草、土や石の素材を生かした木霊のすむ住まいはモノではなく、命ある「生きもの」。だから、住み手には木霊のすむ家を子どものように守り、育てようとする感情が芽生えます。そのうち、子ども(家)が親(住み手)の年齢を超えて守ってくれます。
 工業製品を使っていない古い木造住宅では、当時の技術や暮らしぶりをしのぶことができますが、これからの住宅は後世に何を残せるのでしょうか。巨大な産業廃棄物か文化財か、考え方・作り方次第で100年先が大きく変わります。

自然素材と職人技

 戦後加速した人間中心主義は、自然の摂理を無視した食糧生産や家づくりにも影響し、日本人の自然観や感覚をまひさせたと感じています。
 犯罪が多発する殺伐とした社会から思いやりのあふれる優しい世の中に戻すには、人間以外の命への配慮など自然観・価値観の再考と、各地域に残る香り高い地方(じかた)文化の再生が不可欠です。
 そのためには、自然に沿った暮らしと地域独特の文化の構築が必要で、それを可能にするのが「木霊」の存在です。木の家の奥には歴史があり、その奥に自然があり、そのまた奥に木霊がいるから…。
 木霊の響く家々が増えると、命のつながりを意識する心豊かな暮らしと地域文化が復活するでしょう。そして次第に、自然との調和やつつましさが備わり、礼節を重んじる秩序ある日本社会が見えてきます。
 日本には世界に誇れる木の文化があります。生きものである木と木霊に寄り添う暮らしが、未来の日本を背負って立つ子どもたちの、穏やかで優しい心を育ててくれると信じています。
(一級建築士・環境カウンセラー)


後藤道雄さん

<プロフィル>
ごとう・みちお
1951年、熊本市出身。木造歴45年、伝統構法による人格形成がモットー。日本建築士会連合会賞 奨励賞、住宅建築大賞、木材活用コンクール優秀賞など受賞

社会的企業 じねん(自然)組 一級建築士事務所
http://nuchiyuruya.com/


※写真をクリックすると拡大して見ることができます。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞にて連載<第1517号2015年1月30日に掲載しました>

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