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新城和博の「ごく私的な歳時記」 <3>

本もあい帖
「本もあい帖」その月みんなが親にプレゼントした本とその月読んだ本のことが記録されております。

本もあいの「親」になる3月

 寒さがゆるむ3月。高校の卒業式がついこの間のようだ。自分のではなく、わが子のことだ。子どもを育てるというのは、自分の子ども時代を思い出すということ。自分の高校卒業の時はどうだったかなんて、重ねてしまうのだ。1981年、すでに一部では小麦粉かけが始まっていたなぁ。数年前のこの時期、学校近隣のスーパーで学生に小麦粉販売を制限するという張り紙があった。時代はエスカレートして沈静化する。新しい伝統をつくるというのは難しいものだ。ただ、いつの世も子どもの門出はすばらしいものであってほしい。

 そんな3月、1年間やってきたある模合(もあい)が一回りする。僕はこれまでの沖縄人生において模合の経験がほぼない。沖縄県民においては少数派である。しかし去年の今ごろ、ある友だちが「入院していた時、いろんな人から本をもらった。日ごろ自分が買いそうもない本が集まってきて、それはそれなりに面白かった」という話を聞いて、ひとつの模合アイデアが浮かんだ。「本もあい」である。
 模合をお金ではなく、本で行うのだ。つまり毎月、「親」になった人に本をあげるのである。その人に読んでほしい、読んだことないかも、新しい出合いになるかも、初めての作家、ジャンルかも・・・・・・、いろいろ思案しながら本を一冊選んで、その月の「親」にプレゼントする。自分では日ごろ出合えないかもしれない本が読めるのだ。なにより人に本をプレゼントできるなんて、面白いに決まっているのだ。
 知り合いのブックカフェ「ブッキッシュ」のオーナーに話を持ちかけたら、さっそく12人の模合参加者を集めてくれた。よく知っている人、まったく知らない人、いろいろである。共通点は本が好き。
 本が好き、というのも人によってさまざまで、読むのが好きというのは当たり前だが、眺めてもいいし、匂いをかいでもいいし、装丁し直してもいいし、まぁ実はいろいろな楽しみかたがある。そのなかに、「贈呈する」というのがあってもいいじゃないか。

本の紹介
いろんな本を紹介しています。楽しいです。

 月に一度さまざまな場所に集まり、最近読んだ本をそれぞれ紹介した後に、その月の「親」に本をさしあげる。どういう理由でその本を選んだのか、それぞれ順番に語るのだが、まずそれが面白い。やはり自分が選んだ本というのは、好きな本はもとより、たとえまだ読んでいない本でさえも、思い入れがあるのだ。
 誰かに本をあげる、というのは、実は意外に難しい。自分の趣味を押しつけるのでもなく、かといってその人が好きなジャンルだと、もしかして既に持っているかもしれない。すんなり決まらないと、気が付けば一カ月なんとなくずっとその人のことを気に掛けている、という状態になったりして、面白い。

今月の本の「親」
この方が2月の「親」、いろいろなジャンルの本をもらってほくほく。

 12人の「本もあい」なので、「親」は11冊もらえる。プラス自分で読む1冊を持ってきて合計12冊となる。いっぺんにそれだけ本をもらうという経験はなかなかないだろう。毎回そろった本の写真を記録として撮っていた。ちゃんと「本もあい帳」もある。誰がどんな本を読んでいたのか、どんな本をあげたのか。もらった先月の「親」の感想などがメモされている。
 毎回、「おおー」という本がそろった。意外にかぶらないものなのである、これが。自分で選んだ本もいいけど、他の人がどんな本を選んでくるのか、それが面白いのだ。みんな「難しかった」と言いつつ、楽しそうに本の話をする。
 言い出しっぺの僕は、「親」の順序を決めるくじで、たまたま最後になった。つまり今月である。これまで11人に本を選んできた。ようやくもらえる。ドキドキしている。最後なのでこれまで「本もあい」でもらった本をそれぞれ持ってきて、本の集合写真を撮る予定である。
12人の12冊、144冊。


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この記事のライター

新城 和博

ライター、編集者

新城 和博

1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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