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お役立ちコラム

ウチナー御願ばなし<火の神のネットワーク>

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 沖縄独自の御願行事、火ぬ神(ヒヌカン)や屋敷の御願などはやり方や意味が分からなくて悩んでいる人は多いはず。その由来や実践方法まで、沖縄の歴史、民族に詳しい座間味栄議さんに教えてもらい、正しい知識を身につけよう!

火の神のネットワーク

フールの神が宿るとされるフール。火の神のネットワークで結ばれている
フールの神が宿るとされるフール。火の神のネットワークで結ばれている
屋敷神のほこら。一部地域にしか見られなくなったが、屋敷の御願では火の神に中継ぎを依頼する【写真提供/むぎ社】
屋敷神のほこら。一部地域にしか見られなくなったが、屋敷の御願では火の神に中継ぎを依頼する【写真提供/むぎ社】

つながる神々の世界

 「ばん あらち うたびみそーち」(宜野湾市)、「うとぅいちぢぇい あぎへんな」(伊平屋・島尻)
 いずれも「お取り次ぎくださいませ」とでも訳されようか。とはいっても、ホテルなどのフロントで案内を乞うて取り次ぎを願っているのでは、むろんない。
 火の神への御願の際、ほかの神々への中継ぎを願って発するときの文句の一つである。文句の前に「ひぬかんがなしから うてぃん ぢーち りゅうぐぬかみがなし」あるいは「うみちむんのうしじ(火の神) うんちきみがなし うてぃんがなし」などという、琉球の神々への呼びかけがある。
 概略すると、「うてぃんぬかみ」は、天上の神の所在すると考えられているオボツ・カグラから天降(あまくだ)る「天神」のこと。
 「ぢーちぬかみ」は、土地に宿りこれを守護するとされる「土地神」のこと。墓を守護する「ヒジャイガミ」も土地神である。
 「りゅうぐぬかみ」は海のかなたにあると観念されるニライ・カナイより訪れる「海神」のこと。「にれーりゅうぐ」、「竜宮神」ともよばれる。
 こうした文句は決して、霊能者などの唱える特異なグイスの一節ではなく、前記したように地域に伝えられた伝統的な祈り言葉である。ただ残念なことには、このような祈り言葉を口にする者がほとんどいなくなってしまった。消えゆく習俗の一つにするにはあまりにも惜しい。

身の回りの神々へも

 言うまでもないことだが、火の神を通して中継ぎを願う神々には、このような神招きをして迎える招来神ばかりではない。身の回りの生活空間にあって人びとを守護してくれると信じられているフール(豚便所)の神、屋敷の神、カー(井泉)の神、そして御嶽(うたき)の神もいらっしゃる。
 このように、火の神を通してつながる神々の世界はまことにもって気宇壮大で、小賢しげな人智(じんち)の及ぶところではない。

満願成就を期して

 今風にいえば、火の神を機軸にして途方もないスケールのネットワークが構築されているということになる。
 そして、祈願者の求めに応じて願いを叶えてくださる神々への中継ぎを成し、見守ってくださるわけだ。 それだから、「すべての祈願はウカマ(火の神)を通す」(那覇市)といい、「火の神に頼めばほかの神々に通してくれる」(糸満市)という言葉がより真実味を増し、沖縄の人びとが全幅の信頼を寄せてきたゆえんともなっているのだろう。
 古より沖縄人は、火の神のネットワークを巧みに利用しながら満願成就を期して、心の平安を得てきた。それはまた、沖縄人の信仰に対する考え方を理解するキーワードとなっているともいえる。

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~参考文献~
スーコーのすべてがひと目でわかるようにやさしくまとめられ、合わせてトートーメーのまつり方から継ぎ方までコンパクトに解説したロングセラー。(むぎ社出版)

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執筆/座間味栄議
ざまみ・えいぎ 沖縄県の歴史・民俗を中心に地方出版物を刊行する出版社「むぎ社」を主宰。主な著作に「トートーメーQ&A」「沖縄の拝所」「オバァが拝む 火の神と屋敷の御願」など。御願行事についてやさしく伝えるサイト「御願ドットコム」も運営する。http://www.ugwan.com/


毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざにて第2週に掲載中<第1367号2013年9月12日掲載>

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