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建築家と探す『地域の魅力』<首里金城町の共同井戸(那覇市首里金城町)>

集落の歴史や記憶をとどめる

『人つなぐ大切な場所』

金城大樋川
写真1/金城大樋川。金城町で一番大きく、段々とセットバックした石積みが美しい。昔から石畳を利用する人が水を飲み、休息した

首里金城町の共同井戸(那覇市首里金城町)

 「地域の魅力は、その場所の記憶や歴史にある」と考えるのは、今回の執筆者・根路銘安史さん(アトリエネロ・代表)。そんなことが感じられる場所として同氏が挙げるのが、那覇市首里金城町の共同井戸だ。金城大樋川や仲之川など、古(いにしえ)から人々にとって社交や祈りの場でもあり、集落の成長もたどれる場所の大切さを、水音や緑の中で感じてみよう。

文・写真/根路銘 安史
(社)日本建築家協会沖縄支部会員

 私が地域や集落を見るとき、最初にするのが、樋川(ヒージャー)や井泉(カー)を探すこと。水は生命の源であり、そこから集落は発展していくからだ。
 地域の水場の奥は、祈りの場所であり神聖な御嶽森(ウタキムイ)、腰当森(クサティムイ)となっている。森と海を結ぶまつりの道は、水の道であり、神の道でもある。その宗教的な軸と、直角方向に世俗的なスージが展開していく。拝所、神アシャギ、神屋、根屋そして分家と、集落は成長していく。
 沖縄の集落の空間は、スージと、屋敷囲い、ヒンプン、瓦屋根と雨端で構成され、パブリックな空間と建物の半外部空間のつながりが面白い。拡幅工事等で道の幅が変わると、石垣、ヒンプン、建物の屋根の距離感が変わり、雰囲気が変わる。建物が建て替わっても、集落のスージと泉水の雰囲気だけは、壊さずに残してほしいと切望する。
 今回は、首里金城町の共同井戸について紹介したい。金城町は、石畳道で有名である。道幅と石垣の高さが変わってないので、建物が建て替わっても、スージの雰囲気を残しているように思う。
 首里城南側の地盤は、泥岩(クチャ)で、その風化した表層を流れた地下水を樋川として利用している。その樋川の周りは、緑が日差しを和らげ、水の音が凉しげに響き、水面の波紋に光が反射し、ひんやりとした空気が漂う。雑然とした日々の生活の中で、心を豊かにしてくれ、ひとときの安息が得られる。たたずんでいると、水くみ、子どもをおぶりつつの洗濯、走り回る子どもたち― そんな昔の人々の生活を思い浮かべる。そこは、井戸端会議などの社交の場、コミュニティーの場であり、人々のつながりの場であったように思う。どんどん便利になる半面、近隣の住民同士のフェース・トゥ・フェースの場所が少なくなっていると感じる。
 生命の源である水。そして水場は、人々にとって大切な場所であり祈りの場所であった。もっと関心を持って見てもらい、大切にしてほしいと思う。
 ムラヤーの西側にある金城大樋川(カネグスクウフヒージャー)(写真1)は金城町では一番大きく、段々とセットバックした石積みが美しい。貯水槽は、安全のために大きな玉石で埋められているが、以前は水深1メートルほどあり魚が泳いでいた。昔から石畳を利用する人が水を飲み、休息した場所だ。
 金城大樋川から西に行くと、仲之川(ナカヌカー)(写真2・3)がある。緑のトンネルの石畳のアプローチは涼しく、見えない奥へ、神聖な場所へ引き込まれていく。昔は、水量が多く井戸の縁から水があふれ、その水の流れで洗濯をし、昭和初期までは「もやし作り」が行われていたそうである。前庭の石敷の地下は、現状では見られないが、大きな鍾乳洞のような井戸になっている。
 そのほか、仲之川の南側には潮汲川(ウスクガー)(写真4)が、石畳道沿いの南側には新垣ヌカー(写真5)があり、その東側には上ヌ東門(ウエ ヌ アガリジョウ)ガー(写真6)と、下ヌ東門(シタ ヌ アガリジョウ)ガー(写真7)が、それぞれがある。

写真2/仲之川。水量が多く井戸の縁から水があふれていたという 写真3/仲之川につながる石畳のアプローチ。緑のトンネルが涼しい 写真4/潮汲川。昔は近くまで入江になっていて、塩気のある水が出てきたことが名前の由来になっている 写真5/新垣ヌカー。石畳沿いの南側にある 写真6/上ヌ東門ガー。飲料水として利用されていて、ごみや落ち葉などが入らないよう整備された 写真7/下ヌ東門ガー。石敷き広場の下段は、水をためて、洗濯やイモ洗いができるようになっている
写真2/仲之川。水量が多く井戸の縁から水があふれていたという
写真3/仲之川につながる石畳のアプローチ。緑のトンネルが涼しい
写真4/潮汲川。昔は近くまで入江になっていて、塩気のある水が出てきたことが名前の由来になっている
写真5/新垣ヌカー。石畳沿いの南側にある
写真6/上ヌ東門ガー。飲料水として利用されていて、ごみや落ち葉などが入らないよう整備された
写真7/下ヌ東門ガー。石敷き広場の下段は、水をためて、洗濯やイモ洗いができるようになっている

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞「第1393号2012年8月24日紙面から再掲載」

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