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建築家と探す『地域の魅力』<龍潭通り周辺(那覇市首里)>

旧博物館の石塀に琉球王の意図

『スージに古都の名残』

写真2 表通りから奥に入った小路。敷地の高さが小路の左右で違う
写真2 表通りから奥に入った小路。敷地の高さが小路の左右で違う

龍潭通り周辺(那覇市首里)

 龍潭通り沿線地区が都市景観形成地区に指定された1999(平成11)年、「首里まちづくりルネッサンス宣言」の下、同地のまちづくりが本格化した。当時、建築士の立場から首里まちづくりの基本理念の提案を地域住民や有識者の人々と行ったのが、今回の執筆者・宮平隆雄氏((株)宮平設計・代表取締役)だ。当時行われた首里にまつわる講話の中で興味深い事柄を、現在の状況と対比させながら、首里の知られざる魅力をたどった。

文・写真/宮平 隆雄
(社)日本建築家協会沖縄支部会員

 首里まちづくりルネッサンス宣言が行われたころ、私が所属している沖縄県建築士会首里支部の総会で、首里在住のある有識者(当時90歳)をお招きして講話をお願いしました。首里の成り立ちから王朝時代の背景など、意外と知られていない興味深い内容でしたので、現在の状況と対比しながら紹介したいと思います。
 興味深い内容の1つ目は、首里の通りは王朝時代と変わらないこと。古地図と現代地図を比べてみると、県道・国道といったメーン道路の整備はあっても、通りの位置は昔とほぼ同じであることが分かりました(地図)
 2つ目は、首里城周辺の道はエコロジーであったこと。道路の地盤改良を木炭とイシグーを交互に重ねた、冬に暖かく、夏に涼しい道づくりをしていました。講話をした有識者によると、雨水が浸透しやすく、木炭等によるろ過作用により、きれいな地下水を作っていたそうです。
 3つ目は、邸宅内に雨水を集める桝を設けて、敷地外に排水をしないようにしていたこと。有識者いわく、水は当時の人々にとって貴重な財産だったそうです。そのため、敷地周辺の道路には排水溝がなかったといいます。現在のスージ通りを見ますと、排水溝が取ってつけたように設置されているることに気付きます(写真1)
 4つ目は、琉球王朝の身分制度によって、位の高い人の邸宅は表通りに配され、位が低くなるほど、表通りから離れた場所に配置されていたこと。奥につながる小路(こみち)は位の高い邸宅より50~60センチ下がるよう、段々に配置されています(写真2)。現在でも首里のスージを歩いてみると、奥に行くに従って、小路は段々に広がっていることが分かります。
 6つ目は、中城御殿(旧・沖縄県立博物館跡)正門にある龍潭通りの石塀は、琉球王の世継ぎが住む邸宅であるがゆえに、外側に曲線的に膨らませていること(写真3)。石造りの壁で、片側から見ると、終点がみえない造りになっていて、「終わりのない未来永劫(えいごう)を意味し、琉球王の繁栄を願う意図が込められている」と有識者はおっしゃっていました(写真4)
 余談になりますが、中城御殿は、表側に男性役人用の表御殿と裏側に王子や女性方の御内原に分けられていて、大奥的管理下にあったそうです。有識者が幼年のころは、御内原に自由に出入りができたそうです。
 以上が教科書にない、ある有識者からの生の声のレポートです。地域の魅力は、このような記憶や体験が歴史的背景と重なります。街や建物をデザインするわれわれは先代の知恵、地域の魅力を大事に守りつつ、次世代に伝えていきたいと思います。

写真1 現在のスージ通り。道路を見ると、排水溝が後で設置されているのが分かる
写真1 現在のスージ通り。道路を見ると、排水溝が後で設置されているのが分かる
写真3 龍潭通り沿いに造られた石塀。道路側に対し曲線を描くように造られている
写真3 龍潭通り沿いに造られた石塀。道路側に対し曲線を描くように造られている
図 首里城周辺を、300年以上前の古地図(上)と、筆者が首里のまちづくりに携わっていた1999年当時の地図(下)で比較。道路を示す赤線と緑線の位置がほぼ変わらないことが分かる(地図作成=沖縄県建築士会首里支部。当紙718号にも掲載)

首里城周辺を、300年以上前の古地図(上)と、筆者が首里のまちづくりに携わっていた1999年当時の地図(下)で比較。道路を示す赤線と緑線の位置がほぼ変わらないことが分かる(地図作成=沖縄県建築士会首里支部。当紙718号にも掲載)
写真4 石塀を片側から見ると、あたかも終点が見えないように造られていることに気付く
写真4 石塀を片側から見ると、あたかも終点が見えないように造られていることに気付く

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞「第1406号2012年11月23日紙面から再掲載」

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