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新城和博の「ごく私的な歳時記」 <5>

彼女たちのダウン・バイ・ザ・シー

 夜明け間近になると、鳥の鳴き声が小さな森からこぼれ落ちるように響いてくる。心なしか春・うりずんの季節になると鳥たちの声も弾んでいるように聞こえる。人の気持ち次第でどんな風にも聞こえるのが鳥の声。作家の池澤夏樹さんが沖縄に住んでいたころのエッセーに「シャッキンドリ」の話がある。タイワンシロガシラの鳴き声が「シャッキン、カエシテクレー」(借金返してくれー)と聞こえてしようがない、というやつ。今年の春、うちの前の電信柱にとまっていたタイワンシロガシラは「シャッキン サセテクリヨ、クリヨー」(借金させてくりよー)と鳴いていた。

旧暦の3月3日は浜下り

 さてうりずんの時期、旧暦の3月3日といえば「浜下り(ハマウリ)」である。女性たちが浜に繰り出し、ごちそうを食べて潮干狩りをして遊ぶ、沖縄の「女の節句」行事だ。ムラあげて盛大に行う所も多い。今年は4月21日だった。
 実は、僕が勤めている出版社ボーダーインクは、2001年から会社の行事として浜下りを実施している。この日、女性社員、およびその友達は、わが事務所から浜へ向かい潮干狩りを楽しむのである。毎年このころになると、どの浜へ行こうかと女性スタッフらの話し合いがある。当日、彼女たちは潮干狩りの格好で出社だ。「女の節句」なので、社長をはじめとする男性スタッフは普通に仕事をしている。お留守番。夕方になると、女性陣が潮干狩りでとった海の幸で、楽しい宴会となる。盛り上がります。
 これについて僕は真剣に提案したいのだが、沖縄の会社は、女性たちの浜下り休暇を取り入れたほうがいい。そういう余裕のある社会の方がいいに決まっている。

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 というわけで、毎年旧暦3月3日は、ずっと事務所で留守番をしていた僕だが、今年は平安座島の「サングヮチャー」という行事を見に行くことになり、それは面白そうなのでと、初参加してみた。平安座島の「サングヮチャー」は、毎年新聞でも紹介される有名な行事である。ご存じのかたも多いだろう。うるま市の、勝連半島から伸びる海中道路を渡ったところにあるのが平安座島だ。
 その行事の特徴は、大きな魚の御輿(みこし)を担いで仮装をした参加者たちが道ヂュネー(行列)して、潮の引いた海を歩き、離れ島に渡るというもので、他にはない浜下りなのだ。
 行ってみると、確かに頭にタコや魚の飾り付けをしたおじさんや、ハロウィーンのような仮装をしたニーニーたちが普通に行列していて、実に独特な雰囲気のある行事だった。もちろんわれわれも一緒に道ヂュネーして、島に渡った。

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 大勢の人間が海の向こうの小さな島目指して、ザバザバと歩き、やがて静かに吸い込まれるようにして島影に消えていく姿は、なかなかシュールな味わいさえあった。

 さて来年の浜下り、留守番役に戻れるかどうか・・・・・・。


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この記事のライター

新城 和博

ライター、編集者

新城 和博

1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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