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新城和博の「ごく私的な歳時記」 <6>

スーマンボーシュの〈那覇まち〉歩き

 今年は旧暦のひそかな実力というものを感じた「梅雨入り」だった。
 例年よりだいぶ遅いとされた今年の梅雨入り。今年の旧暦では旧4月に入ったのを見計らったかのように、梅雨入り宣言がなされた。旧暦での、いわゆる梅雨というのは、二十四節気の「小満・芒種(ぼうしゅ)」にあたる。沖縄では「スーマンボーシュ」と言うけど、これが旧の4月から5月にかけてのこと。だから新暦では今年はだいぶ梅雨入りが遅れたことになるけど、旧暦ではまぁまぁの線、ということになる。
 梅雨と言わずに「スーマンボーシュ」と呼ぶと、雨の一日がなんとなく心地よくなるかどうかは自分次第。スーマンボーシュになって、近くの森から聞こえていた「アカショウビン」の鳴き声がしなくなった。季節の変わり目は、小さい変化でも少し寂しくなるものだなぁ。

月桃の花
昨日のまち歩きの時に写した月桃の花

 そんな時期ではあるが、那覇のまち歩きの本を出版しました。日頃はさまざまな沖縄県産本を企画・編集しているのだが、たまに自分で書いた本もこそっと刊行するのである。
 今回は『ぼくの〈那覇まち〉放浪記』という、復帰後の那覇から、戦前の那覇まで、古い地図と個人的な記憶を重ねて歩いた那覇のまち歩きの随筆。自分の「趣味」である「まち歩き」をまとめたのは初めてだけど、歴史が重なり合う那覇のおもしろさを感じとってもらえたらいいなと思っている。
 まぁ「まち歩き」と言っても大層なものではなく、古い地図を持ってほろほろ散歩するというたわいもないものだ。だけど春夏秋冬、生まれ育った街のあちこちを、失われた昔の姿に思いを浮かべながら歩いたら、時をこえた旅をしたような気持ちになるのである。日々の生活に思い込みと妄想を加えると、少し潤いが増すはずだ。

 スーマンボーシュ、雨の時期も、実はまち歩きとしてはなかなか味わい深い。雨が似合う街はいい街なのだ。雨音が心地いいけど、家の中でじっとしていなくてもいい。この本の中では「雨にぬれても 牧志ウガン界わい」と題して、この時期のまち歩きの話を収録してある。
 牧志ウガン公園では、毎年6月に全島の力自慢を集めて、奉納角力大会が開かれる。小雨の中たまたまその大会と出くわした話。沖縄の角力は「シマー」と呼ばれている独特なもの。胴着を着てお互いの帯をつかんでから勝負が始まる。土に背中が付いたら負けなので、一瞬の投げ技で勝負が決まる。なかなかかっこいい。
 国際通りのすぐそば、ゆいレールが通る界わいでそんな伝統的な闘いが繰り広げられている、というのが面白い。ちなみに今年の牧志ウガンでの角力大会も、やはり雨の中行われたようだ。

2年前の沖縄角力大会
2年前の沖縄角力大会

 そもそも牧志ウガン公園は、実はかつての岬の突端に位置している。今は周辺が埋め立てられたり、住宅地化していて分からないけれど、要するにこの周辺は海だったのである。那覇がかつて「浮島」と呼ばれていた小さな小島だったということは、最近は琉球史通でなくても知られるようになったけれど(?)、その島だった痕跡は、実は今の那覇のあちこちにある。そんな微かな島の記憶、失われた街の記憶を探していくのが、〈那覇まち〉歩きなのです。


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この記事のライター

新城 和博

ライター、編集者

新城 和博

1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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