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本村ひろみの「おきなわ 暮らし散歩」<8>

水の月

『水の月』


普天間を過ぎたあたりから雨が降ってきた。
国道330号線、北向け。
石平交差点から沖縄市へ向かう道のり。
フェンスの向こうには芝生が広がっている。
グラウンドを走る鮮やかなユニホーム姿。
刈られたばかりの芝の青さ。
目を閉じていても情景が香りたつ。
梅雨時は嗅覚が研ぎ澄まされている。

瑞慶覧あたりから、
バスの窓ガラスに小さな水玉が勢いよく描かれ始めた。
空から真っすぐに落ちてくる雨粒のライン、
その点線を縦書きの物語に例えると、
梅雨の季節と日本語は美しい関係だと知る。

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水滴でゆがんだ窓の景色を眺めていたら
小学生のころの雨の日を思い出した。

授業が終わるころ、傘を持ってお母さんたちが迎えにくる。
ざわめく廊下。
両親が共働きだったので、たまに宮古島から遊びに来ていたオジィが
大きな傘を持って正門のところで待っていた。
私は教室で育てたヒヤシンスを大事に抱え、
帰り道、おしゃべりしながら水たまりの中を歩く。
弟もそれをまねして靴下をぬらす。
オジィは何も言わずに私たちに傘をさしていた。

いつも晩酌しながら東海林太郎の「赤城の子守唄」を歌っていたオジィ。
雨音は懐かしい歌声も運んできた。

居眠りをしていたのか、
ふと気付くとバス停を幾つか通過している。

中の町から乗ってきたお母さんのビニール袋に、
ずっしりとした大きなスイカが透けて見える。
まるでイラストのような半月型。
熟した赤い果肉に種の黒い点々。種のある辺りは糖度が高い。
想像しているうちに滴るようなスイカの甘さが、口いっぱいに広がった。

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いつの間にか雨は上がり、通りの風景に色彩が戻ってきた。
胡屋のバス停で降りる。
ドアが開いてモアッと湿った空気が体を包んだ。
まるで水の中にいるようだ。

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6月、水の月。
私たちは太古の水の記憶をよみがえらせるように、
スーマンボースー(小満芒種)の水槽の中にいる。
南風が空中の水分を海にかえし、
太陽が真上にやって来る日を待ちわびながら。


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この記事のライター

本村 ひろみ

フリーパーソナリティー

本村 ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業。
ラジオやテレビのレポーターを経て、ラジオのパーソナリティ、式典や披露宴、イベントなどの司会として活躍中。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「プラチナ世代の活き方革命」でパーソナリティーを務める。沖縄県立芸術大学大学の修士課程を修了。英国サリー芸術大学に留学し、ファッション・デザイン課マスターコースで学んだ経験を生かし、デザインやイベントのプロデュースにも携わる。
http://cats007.ti-da.net/

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