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ウチナー御願ばなし<アブシバレーと理想郷>

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 沖縄独自の御願行事、火ぬ神(ヒヌカン)や屋敷の御願などはやり方や意味が分からなくて悩んでいる人は多いはず。その由来や実践方法まで、沖縄の歴史、民族に詳しい座間味栄議さんに教えてもらい、正しい知識を身につけよう!

写真:ウフアガリジマから渡来したアマミキョが第一歩をしるしたと伝えられるヤハラヅカサ。ウフアガリジマに向けて遥拝する
写真:ウフアガリジマから渡来したアマミキョが第一歩をしるしたと伝えられるヤハラヅカサ。ウフアガリジマに向けて遥拝する

アブシバレーと理想郷

写真:歴代国王のニライカナイへの遥拝所だった久高島の伊敷浜
写真:歴代国王のニライカナイへの遥拝所だった久高島の伊敷浜

虫送りとニライカナイ

 年中行事の一つに「アブシバレー」(旧暦四月の中旬)がある。ざっくりとした言い方をすれば、害虫の被害から作物を守るために田のアブシ(畦)の草を刈り、害虫を取り除く虫払いの行事である。神事として、ネズミやイナゴなどの害虫を埋葬・焼却するか、供物といっしょに草や木でつくった小舟に乗せて海へ流す儀式が行われる。害虫を乗せた小舟の行き着く先は「ウフアガリジマ」あるいは「ニライカナイ」とする地域が多い。
 ウフアガリジマは東の海のかなたにあるとされる理想的な楽園。沖縄創世の神・アマミキョもそこからやってきたとする伝承があり、藪薩御嶽・ヤハラヅカサ・浜川御嶽(旧玉城村)はウフアガリジマへの遥拝所としても知られている。
 ニライカナイは国語辞典にも記載されているように、海のはるかかなたにあるとされる神々の住む世界。稲やアワなどの作物の収穫を終え、新たな作物の植え付けの始まる年の変わり目に、私たちの住む世界、村々へニライカナイより神がやってきてユー(豊穣・幸福)をもたらしてくれるという信仰がある。久高島の伊敷浜や玉城仲村渠集落にあるミントングスクは、ニライカナイへの遥拝所として訪れる人が多い。

天然の心根のやさしさ

 ウフアガリジマ、ニライカナイともに私たちの住む世界とは別の、もう一つの神々の住む世界(他界)である。となると、害虫を乗せた小舟の流れ着く先にあるものは、私たち沖縄人が憧憬してやまない楽園であり、神々の原郷ということになる。そのような意味から、ニライカナイは沖縄人の思い描く理想郷であると同時に、あしきものを送り込み封じ込めておく場所であるともされている。
 果たしてそうだろうか。封じ込め、二度と再び人間社会に舞い戻ることがないよう害虫を流すのであろうか?
 害虫といえども生きとし生けるものの仲間。彼らとて、神々の住む楽園に流されるのであれば、虫ケラ扱いを受ける人間社会に舞い戻る気などさらさら起こすまい。そんな彼らを封じ込める必要などないはずだ。
 そこは、封じ込めるためというより、楽しく暮らせる理想的な世界へ送り出すと考えた方が沖縄人の琴線に触れる。
 一見、矛盾するようにも見える理想郷にむけて害虫を流すという儀式の中にも、沖縄人のもつ「天然の心根のやさしさ」があらわれているのだろう。
 ニライカナイのもつ二面性を議論するよりも、古事記に登場する山幸彦(やまさちひこ)の行ったワタツミノ神の御殿や竜王の住むという宮殿を思い浮かべた方が楽しいではないか。

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~参考文献~
「沖縄の聖地」。東御廻り(アガリマーイ)と今帰仁上り(ナチジンヌブイ)の神ウガミと開びゃくの七御嶽の聖地巡拝ガイド。

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執筆/座間味栄議(ざまみ・えいぎ)
 沖縄県の歴史・民俗を中心に地方出版物を刊行する出版社「むぎ社」を主宰。主な著作に「トートーメーQ&A」「沖縄の拝所」「オバァが拝む 火の神と屋敷の御願」など。御願行事について、やさしく伝えるサイト「御願ドットコム」も運営する。
http://www.ugwan.com/


<ウチナー御願ばなし>
写真提供/むぎ社
毎週木曜日発行・週刊ほ〜むぷらざにて連載<第1404号2014年6月5日より再掲載>

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