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お役立ちコラム

本村ひろみの「おきなわ 暮らし散歩」<11>

『色なき風』

木々を揺らす風の音で目が覚めた。
枕元の時計は午前5時を過ぎたばかり。
外はまだ暗い。
肌寒さを感じてタオルケットの中で足を丸める。
もうひと眠りしよう。
そのうち
規則正しい時計の針が朝をつれてくる。
耳をすますと
新聞配達の足音が遠くから聞こえる。

目覚ましのいらない休日の朝は幸せだ。

実家の庭で鈴なりに実ったバンシルー(グヮバ)を
一房分けてもらって台所に置いていたら
部屋中に甘酸っぱい香りが漂う。
小さくてかたい種をスプーンで取りのぞいて
淡いピンク色の果肉をかむ。
甘くてトロリとした感触。
子どものころに飲んだネクターの味がよみがえる。
おもいっきり匂いをかいで懐かしい気分に浸った。

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シークヮーサー、パパイア、バナナにバンシルー。
夏休みの絵日記には、実のなる木をよく描いた。
果樹の成長を見守りながら
母の「そろそろ採らないとネー」という言葉を待って
木に登り収穫する楽しみ。
庭に果物の木があることの豊かさを
大人になって気付いた。

いま住んでいる近所には、昔ながらの瓦家が点在し、
石積みの塀の向こうには牛小屋の形跡もある。
闘牛のいた地域だ。

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オレンジ色に染まった涼しい夕暮れ時
当時の面影を残している住宅街を歩くと
塀からあふれる草花と
手を伸ばせばつかめそうな
たわわに実った大きなかんきつ類に出合える。

水をやり、手入れをして栄養を与える。
丁寧な日々の営み。

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庭におじさんの姿を見つけ、思わず
「おいしそうですね」と声をかける。
おじさんはうれしそうに
「もっと大きくなるよ」と答えてくれた。
風がまき上げる落ち葉を竹ぼうきでかき集めながら
庭の木を見上げている。

58号線を境に、海側は区画整理された新しい住宅街。
クロキの街路樹が通りに赤や黄色い実を落としている。
甘い実だ。
その実を鳥がついばみ、道ゆく子どもたちはいつか、
この木は「三線の棹(さお)」になるということを知る。

9月。
小さな秋を風が運んでくる。
光を和らげる透明な風。
その風に乗ってトンボがスイスイと空を舞う。
薄い羽を空の色に染めながら。

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この記事のライター

本村 ひろみ

フリーパーソナリティー

本村 ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業。
ラジオやテレビのレポーターを経て、ラジオのパーソナリティ、式典や披露宴、イベントなどの司会として活躍中。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「プラチナ世代の活き方革命」でパーソナリティーを務める。沖縄県立芸術大学大学の修士課程を修了。英国サリー芸術大学に留学し、ファッション・デザイン課マスターコースで学んだ経験を生かし、デザインやイベントのプロデュースにも携わる。
http://cats007.ti-da.net/

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