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五月橋バス停が語る まちの記憶(那覇市宇栄原)

「五月橋バス停が語る」 まちの記憶 Vo.19

十字路の舗装に橋と川の名残が

 今回は那覇市の南側、小禄地区にある五月橋バス停を取り上げます。周囲は古くからの住宅が建ち並ぶ一方、家並みの間に緑が顔を見せる郊外の落ち着いた雰囲気の風景が広がります。

 五月橋でバスを降り周囲を歩くと、「五月」あるいは「さつき」と称する施設、店舗が数多く存在するのが分かります。そばに位置する小学校も、さつき小学校と称されています。この付近の住所は宇栄原ですが、すっかり五月・さつきが定着し、親しまれている様子が分かります。ちょうどこの点は、前回取り上げた開南と通ずるものがあります。
 しかし、歩けば歩くほど不思議なことがあります。この五月橋バス停の周辺に、橋はおろか川すら見当たらないのです。バス停の示す五月橋とは、果たして何なのでしょうか。
 もう一度、バス停近くの交差点に戻ってよく観察してみました。この交差点が、かつて五月橋があったとされる付近です。すると、交差点の中央部だけ道路の舗装が異なっていることに気がつきました。アスファルト舗装に囲まれて、中央部だけが菱形(ひしがた)にコンクリートとなっているのです。よく見ると、この菱形部分の短辺は何かで縁取っていたようなわずかな段差が存在しています。
 さらに周囲を歩くと、さつき小学校の前に「五月橋の由来」と記された案内板が設置されていました。その説明によると、この地域に「ハゲーラ川」と呼ばれる川が流れており、1961(昭和36)年にコンクリート製の橋を架けた際、5月に完成したことにちなんで「五月橋」と名付けられた、との記述がありました。その後、川にふたがされ(暗渠化(あんきょか))、道路拡張も行われる中で、欄干が撤去されたともあります。
 説明を踏まえて改めて交差点を見ると、確かにあの菱形部分は橋と考えてもおかしくありません。バスが通る古くからの道の側から見ると、コンクリートの菱形はちょうどその道幅に広がっています。そして菱形の縁取り、左右の段差はちょうど欄干ほどの幅となっています。恐らくコンクリートの菱形こそが、前後の川が暗渠となり、欄干が撤去された後の五月橋なのでしょう。
 地域が住宅地として発展する過程で、川も橋も見えなくなってしまいました。しかし今でも、見えないところで橋は行き交う人々を確かに支えています。そして、バス停の名前も変わらずに、地域のシンボルとも言える橋の存在とその名を伝えているのです。

五月橋のバス停。通過する路線は1路線のみだが、バスを待つ人をよく見かけるので、利用する人は多いのだろうか。住宅の庭に植えられた緑がほっとする
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五月橋のバス停。通過する路線は1路線のみだが、バスを待つ人をよく見かけるので、利用する人は多いのだろうか。住宅の庭に植えられた緑がほっとする

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五月橋の交差点。一見するとごくありふれた住宅地の十字路だが、この風景に川と橋が隠れている。黄緑色の車の後ろ、道路の舗装がコンクリートとなっている部分に注目
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五月橋の交差点。一見するとごくありふれた住宅地の十字路だが、この風景に川と橋が隠れている。黄緑色の車の後ろ、道路の舗装がコンクリートとなっている部分に注目
<3> 舗装がコンクリートとなっている部分に近づいてみる。前後の、バスが走る道の幅とほぼ同じ長さがコンクリートとなっており、さらに50センチほどの「縁取り」がある。同時期に那覇市内で架けられた橋と材質や規格が似ているので、この部分が五月橋ではないかと推測される
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舗装がコンクリートとなっている部分に近づいてみる。前後の、バスが走る道の幅とほぼ同じ長さがコンクリートとなっており、さらに50センチほどの「縁取り」がある。同時期に那覇市内で架けられた橋と材質や規格が似ているので、この部分が五月橋ではないかと推測される

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<4> 角度を変えて、交差する道からの視点。ちょうど道の中央部に「橋」が位置している。つまり、この写真で撮影している立ち位置は、川に蓋(ふた)をした部分となる。この下に今でもハゲーラ川が流れているのだろうか
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角度を変えて、交差する道からの視点。ちょうど道の中央部に「橋」が位置している。つまり、この写真で撮影している立ち位置は、川に蓋(ふた)をした部分となる。この下に今でもハゲーラ川が流れているのだろうか
<5> 五月橋から下流の方向に400メートルほど進むと、ハゲーラ川が顔を出した。この川幅から推測すると、五月橋の付近ではちょうど「橋」ほどの川幅ではないかと推測できる。なおハゲーラ川は、五月橋から上流側でもわずかに地上に顔を出す部分がある
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五月橋から下流の方向に400メートルほど進むと、ハゲーラ川が顔を出した。この川幅から推測すると、五月橋の付近ではちょうど「橋」ほどの川幅ではないかと推測できる。なおハゲーラ川は、五月橋から上流側でもわずかに地上に顔を出す部分がある

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<6> さつき小学校の一角、道に面して設置された「五月橋の由来」の説明板。戦前の簡単な地図もあり、過去の様子をつかむヒントになる
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さつき小学校の一角、道に面して設置された「五月橋の由来」の説明板。戦前の簡単な地図もあり、過去の様子をつかむヒントになる

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<まちあるきライター>
一柳亮太(ひとつやなぎ・りょうた)

 1978年、神奈川県出身。大学で地理学を専攻し、離島に暮らす人々の生活行動を研究。まちや地域をテーマにしたワークショップやプロジェクトを運営する傍ら、まちあるきライターとしても活動。

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞「第1383号2012年6月15日紙面から再掲載」

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