沖縄の不動産・賃貸・売買ならコノイエ+プラス

お役立ちコラム

実践!防災のワザ「避難所おにぎり・弁当秘話」【沖縄から防災を考える】

実践!防災のワザ[2]
避難所おにぎり・弁当秘話

執筆:稲垣暁

 災害時だけでなく、日ごろから暮らしの中で取り入れていると、いざという時に役立つ情報を届ける「実践! 防災のワザ」。防災士として活動する稲垣暁さんが、防災時の食に関するアドバイスをする。

 大災害時、避難所の配給食といえば「おにぎり」。大震災の避難所では、コンビニ等でよく見かける包装されたおにぎりが毎日配られた。このおにぎり、平時の市販品と異なることをご存じだろうか。
 2011年4月。岩手県大槌町の避難所でボランティア活動を行った際、多くの高齢者が「いただいたのに食べられず、申し訳ないのでよかったら食べて」と差し出すものがあった。おにぎりだった。
 毎日なので飽きてしまう、というだけではない。冷えたおにぎりは避難所の高齢者にとって消化されにくく、便秘と下痢を繰り返す人もいる。手をつけない人も多い。だが、普段おにぎりを食べて体調を落とすことがそうあるだろうか?
 実は、配給のおにぎりは水分を少なめにして、固めに製造されることがあるのだ。次の理由からだ。
 地元給食会社も被災している状況で、行政は遠隔地に発注する。道路の破壊や渋滞もあり、配送に時間がかかる。間に合わず他を食べた後に配られると、冷蔵庫がないため常温保存になる。そして私たちが経験したように、時間を経て他人の手に渡ることもある…。

島おにぎり用に細かく刻んだ島野菜。左上から時計回りにニガナ、シマナー、フーチバー、ハンダマ
島おにぎり用に細かく刻んだ島野菜。左上から時計回りにニガナ、シマナー、フーチバー、ハンダマ

 こうしたおにぎりの食べづらさに加え、野菜の配給が難しいためビタミンやミネラルの摂取ができず、高齢者を中心に体調を崩す被災者が激増した。避難生活で病死した人は、阪神淡路・東日本大震災とも死者の2割を占める。高齢化地域が被災した新潟県中越地震では7割以上だった。
 震災が少し落ちつくと、配給に弁当も加わる。だが、腐敗を考えると水分の多い野菜はやはり難しい。どうしても揚げ物が中心で、ごはんは水気が少なく固めになる。避難所で食中毒が発生したら、取り返しのつかないことになる。行政は、極力腐敗しない食を発注せざるを得ない。
 阪神淡路大震災時の避難所食を研究した奥田和子さん(甲南女子大学名誉教授)によると、行政は36時間腐らない弁当を給食会社に求めた。震災2週間後は神戸市内だけでも22万食が必要で、手間と費用がかかる野菜の調理はできなかったという。
 「阪神淡路」は1月だった。もし「高温多湿」「離島県」の沖縄で真夏に大災害が起こったら、おにぎりや弁当の調達はできるだろうか? 筆者は公助や配給だけをあてにしない、地域のアタイグヮー(家庭菜園)の野菜を活用した「島野菜おにぎり」を提唱している(下コラム参照)。


島野菜でにぎり直す!

細かく刻んだ島野菜をごはんに混ぜて、ビニールに入れてにぎる。写真はシマナーとツナ缶を入れたもの
細かく刻んだ島野菜をごはんに混ぜて、ビニールに入れてにぎる。写真はシマナーとツナ缶を入れたもの

 配給のおにぎりをおいしくし、栄養素も多く摂る方法がある。アタイグヮー野菜の活用だ。沖縄在来野菜(島野菜)が特に有効。島野菜を細かく刻み、おにぎりをいくつか集めて混ぜるだけ。島の風味豊かで栄養素に富んだおにぎりになる。何よりおいしい! ゴマやツナを加えるのもよい。お湯でボロボロジューシーにすると消化を助ける。
 島野菜は、避難所で欠乏しがちな栄養素が一般野菜より豊富。鉄分はフーチバーやシマナー、カルシウムはサクナ、ハンダマに多い。ビタミンB2はフーチバー、ンスナバー、Cはやはりゴーヤーだ。
 沖縄の家庭菜園は、亜熱帯の強みで野菜が早く育つ。地域の強力な「栄養素備蓄庫」だ。沖縄ならではの市民防災なのである。

▼関連記事
[8]炊き出しは「具」にこだわれ
[7]「粉モノ」で家族水いらず
[6]災害時、水は使い回す
[5]万能島野菜「フーチバー」
[4]勇気と希望の源
[3]夏場の沖縄 避難食の困難
[2]避難所おにぎり・弁当秘話
[1]食べることは生きること


沖縄国際大学特別研究員の稲垣暁氏

いながき・さとる
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助を専門に東北や神戸との交流を続ける。


<実践!防災のワザ>
沖縄タイムスの副読紙/毎週木曜日発行・週刊ほーむぷらざ「第1454号2015年5月28日紙面から掲載」

月別アーカイブ

ライター