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実践!防災のワザ「夏場の沖縄 避難食の困難」【沖縄から防災を考える】

実践!防災のワザ[3]
夏場の沖縄 避難食の困難

執筆:稲垣暁

 前回(1454号5月28日発行)で、災害時に配給されるおにぎりや弁当が、包装は同じでも平時に市販されるものとは異なることを書いた。ごはんは水気を飛ばして硬めに炊き、水分が多く傷みやすい野菜は避ける。輸送距離や消費までの時間を考え、長時間保存が求められるからだ。
 もし、真夏の沖縄で大災害が発生したらどうだろうか。大規模停電と断水、食品企業の被災、県外発注困難など厳しい状況になる。自力での炊き出しが必要になるが、高温多湿に応じたメニューと食材調達をどうするか。また、過去の例から住民の半数は避難所に殺到する。どう優先順位をつけて配給すべきか。考えておかなければならないことは多い。
 まず、火を通すことが不可欠である。「必ず何時までに食べ、残ったら捨てる」指示も必要。調理者の衛生管理はもちろん、避難者の手洗いの徹底も絶対だ。特に断水した場合、トイレから避難室に雑菌が持ち込まれやすい。避難所で集団食中毒が起これば、大変な2次災害になる。

断水下で食器を洗わなくてもよいよう、ラップで包んでから料理を盛る
断水下で食器を洗わなくてもよいよう、ラップで包んでから料理を盛る

 つまり、平時から地域での水源確保と消毒液の備蓄が必要なのだ。災害時、野菜や米などを洗った水は捨てずに再貯水し、トイレでの手洗いや洗浄水にまわすなどリサイクルする。米や麺を洗った水は、髪や肌を拭くのに用いるとよい。その後、雑用水にまわす。
 調理時に異物を混入させない管理も必要だ。1998年に和歌山の地域イベントで出たカレーに毒物が混じった事件を思い出してほしい。混乱している災害時は、チェック機能がさらにおろそかになる。故意でなくても、風で飛んできたものが入ることもある。
 避難訓練で炊き出しが行われることが多いが、食器・食材やマンパワーの不足、衛生管理、水の問題まで考えて行われるものは少ない。被災当日、避難者の多くは混乱にある。炊き出しがパニックを引き起こすこともあり、現実には不可能なことが多い。厳しい場面を想定した炊き出し訓練が求められる。
 実際に停電断水下にある真夏の避難所で炊き出しを行うとどうなるか、2012年6月に那覇市繁多川公民館で実験を行った。避難者として高齢者と保育園児に多く来ていただいた。地域リーダーのみなさんで調理し食べていただいたところ、さまざまな気付きがあった。結果は下記コラムに。


停電断水下の豚汁に悲鳴

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 繁多川公民館での炊き出し実験では、衛生面と栄養面から豚汁を選んだ。梅雨時の蒸し暑さの中、停電断水を想定して行った。都市型公民館で避難部屋は3階だが、冷房もエレベーターも使用不能とした。水は地域の井戸から、野菜は家庭菜園などから調達した。
 最大の収穫は、「真夏の豚汁は厳しい」と分かったことだ。部屋に人が大勢いること自体高齢者は苦痛で、そこで熱い汁ものを食べるのは大変だった。階段での誘導や配膳も難しかった。加熱が必要なことを考えると、カレーや肉じゃがの方がよいだろう。
 地域のご婦人が「大鍋で炊くので、煮崩れしないよう」具は大きめに切ったが、残す高齢者が多く出た。細かく刻んでいないと食べづらいのだ。地域のみなさんは「やってみて、さまざまな人が来る難しさが初めて分かった」。多くの人が調理に関わる中で、管理や情報共有の難しさも理解した。

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[4]勇気と希望の源
[3]夏場の沖縄 避難食の困難
[2]避難所おにぎり・弁当秘話
[1]食べることは生きること


沖縄国際大学特別研究員の稲垣暁氏

いながき・さとる
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助を専門に東北や神戸との交流を続ける。


<実践!防災のワザ>
沖縄タイムスの副読紙/毎週木曜日発行・週刊ほーむぷらざ「第1458号2015年6月25日紙面から掲載」

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