沖縄の不動産・賃貸・売買ならコノイエ+プラス

お役立ちコラム

実践!防災のワザ「地域食は「勇気と希望の源」」【沖縄から防災を考える】

実践!防災のワザ[4]
地域食は「勇気と希望の源」

執筆:稲垣暁

 被災した住民に最も勇気と希望を与える「食」は何か、ご存じだろうか? 二つある。
 一つは「ローカルフード」。地域でなれ親しまれた料理や食材だ。
 私が被災した神戸では、お好み焼きやブタマンがそれにあたる。沖縄なら伝統防災食のソーメンチャンプルー(正しくはソーミンタシヤー)はもちろん、沖縄家庭料理はすべて該当する。中でもヒラヤーチーやてんぷらなど「C級グルメ」ほど、食と人のアイデンティティーがクロスして力がよみがえる。島野菜など地域の食材が入ればなおさらだ。
 避難所で個人が火を使うことは難しい。家が無事でもライフラインが断絶し食材もない。そんな制限された状況で、無事だった家に住民同士で食材を持ち寄り、配給された携帯コンロで作って食べるC級ローカルフード。「きょうから頑張ろう!」と、明日への一歩を踏み出させてくれた。

沖縄ガールスカウトの防災食研修で、メンバーがカセットコンロで手際よく揚げた島野菜のてんぷらと空き缶を使った炊飯
沖縄ガールスカウトの防災食研修で、メンバーがカセットコンロで手際よく揚げた島野菜のてんぷらと空き缶を使った炊飯

【PR】沖縄県那覇市|賃貸物件をお探しの方はコノイエプラス

  もう一つは、「ソウルフード」、つまり「魂の食」。
 その代表は、地域住民や遠方から来てくれたボランティアによる炊き出しだ。配給されるおにぎりや弁当は、配送されて置かれているだけだった。
 炊き出しの豚汁は、「がんばろな」「熱いよ、気を付けて」を声を掛けながら配られた。「ありがとう。ほんまに生きててよかった」と笑いながら涙を流して受け取る人たち。みな整然と列に並び、弱い者を優先した。見ているだけで胸が熱くなった。
 震災2週間後くらいから、倒壊した中国や韓国料理店の店舗前で店主たちが格安で振る舞ったブタマンやギョウザ、チヂミは、民族を超えた住民のつながりをさらに深めた。商店街では肉屋が店の前でコロッケを揚げ、喫茶店がコーヒーを配った。
 これらは口コミで広まり、交通機関が途絶しているにもかかわらず、多くの市民が「にぎわい」に飢えていたかのように駆け付けた。知らない者同士が「無事でよかったね」と肩をたたき合った。
 ローカルフードとソウルフードは被災者の健康を維持するだけでなく、「まちと心の復興」のエンジンになるのだ。


最強の防災食 黒糖とカチューユ

 避難所生活で最も欠乏する栄養食品に、「砂糖」がある。栄養素では、鉄分とカルシウムの欠乏が大きい。黒糖が含む鉄分は100gあたり4.7mgで、野菜類トップのフーチバー4.3mg、シマナー4mg、ホウレンソウ3.7mgを上回る。カルシウムはサクナに次ぐ240mgで、ハンダマと大根葉の各211mgより多い。
 エネルギーは352kcalで、群を抜いている。沖縄の年配者宅を訪問すると、やたら黒糖をなめさせられる意味が分かる。戦前戦後の厳しい生活環境から体を守る、まさに備蓄品でもあった。
 被災生活では、偏った食とストレスで体調を壊しやすい。ここでも沖縄の伝統食が生きる。代表は「カチューユ」(かつお湯)だ。ミネラル(リン、鉄分、ナトリウム、カリウム)やビタミンB1・B2が豊富で、体力回復効果も大きい。昔からの「風邪をひいたらカチューユ」にはちゃんと訳があるのだ。
(データは沖縄県農林水産部HP「おきなわ伝統的農産物データベース」、ニライ社「おきなわの味」から)

避難所で欠乏しがちな食品
①砂糖
②豆類
③芋類
④野菜

避難所で欠乏しがちな栄養素
①鉄分
②カルシウム
③ビタミンC
④B2
(阪神淡路大震災での避難所調査から)

▼関連記事
[8]炊き出しは「具」にこだわれ
[7]「粉モノ」で家族水いらず
[6]災害時、水は使い回す
[5]万能島野菜「フーチバー」
[4]勇気と希望の源
[3]夏場の沖縄 避難食の困難
[2]避難所おにぎり・弁当秘話
[1]食べることは生きること


沖縄国際大学特別研究員の稲垣暁氏

いながき・さとる
1960年、神戸市生まれ。沖縄国際大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助を専門に東北や神戸との交流を続ける。


<実践!防災のワザ>
沖縄タイムスの副読紙/毎週木曜日発行・週刊ほーむぷらざ「第1462号2015年7月23日紙面から掲載」

月別アーカイブ

ライター