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新城和博の「ごく私的な歳時記」<13>

鳥づくし

 鳥の声とともに朝がやってくる。首里の森のそばに住んでいると実感することだ。
 少しずつ白々としていく朝空の隙間からこぼれ落ちるように、いろんな鳥の声がする。鳥の生態に詳しいわけではないので、彼らがどんな気持ちで鳴きだすのかは分からない。ただ、その声で一日が始まるのは大変心地よい。
 一年の始まりにふさわしい鳥といえば、やはり八重山民謡「鷲ぬ鳥(ばしんとぅい)節」で歌われている、鷲(わし)の子だろう。正月の朝、美しい色合いの羽を太陽の光に輝かせて飛ぶ立つ鷲ぬ鳥の姿は、さすがにここでは見ることができないが、首里の小さな鳥たちにその面影を重ねてもいいかもしれない。今年一年がいい年でありますように。

 わが家の棟上げの時、サシバが弁ヶ岳の森からはるか上空へと舞い上がっていくのを見た。なんとなく縁起がいい気がした。去年もサシバは、渡りの途中でやってきて、11月のある朝、キィーキィーという独特な甲高い声で鳴きあって、やがていつものように空高く舞い上がっていった。
 ご近所の庭の木に群れでやってくるのはタイワンシロガシラ。その鳴き声が「シャッキンカエシテクレー」(借金返してくれー)と聞こえると書いたのは、かつて南城市知念に住んでいた作家の池澤夏樹さん。以来、僕もそのように聞こえてしまうのだが、このごろは「シャッキンシテナイ、シテナイ、シテナイ」というよう聞こえることもある。人の心を反映するのが鳥の鳴き声なのだろう。
 最近、ある鳥と知り合いになった。週末、ぼくらは家のデッキに小さなイスを出して、晩酌気分でビールやらワインやらを飲むことがある(ちなみに泡盛は室内で飲む、なぜか)。鳥たちも森へと帰る頃合いらしく、いろんな鳥が目の前を横切っていくし、森からは「ホゥホゥ」やら「ピィピィ」やら聞こえてくる。

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 そんななか、いつのころからか、向かいの家の屋根の端っこにとまり、じっとこっちを見ている(ように思えた)小さな鳥がいた。ふと思いついて、つまみのピーナツをひとかけら、ポーンと放り投げてみた。するとその小鳥は、スーッとそのかけらめがけて飛んできた。路上に落ちたピーナツそばにチョンチョンチョンと近寄って、ヒョイっとつまむと、また屋根の上にススッーと戻っていった。そしてまたじっとこっちを見ている。今度は確かに見ている。もう一度ポーンとピーナツをほおったら、またスーッ、チョンチョンチョンとつまんだ。へえー、おもしろいなぁ。何度かそんな風にしているうちに、日はとっぷりと暮れて、その鳥もどこかへ飛び去った。
 以来、その小鳥は、時々ぼくらの晩酌の相手になることがあった。ぼくらがデッキにイスを並べると、いつのまにか、お向かいの屋根の端っこにいるのである。どこかで見ているのかしら。どうやらヒヨドリのようだ。いわゆるスーサーだ。

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 ある朝、デッキの方から、ふと視線を感じた。振り向くとガラス窓越しに、あの小鳥が家の中をのぞいているではないか。わっ。少しびっくりしたが、もしかしてと思い、脅かさないようにデッキにそろりそろりと出て、トーストのかけらを、ポーンとほおってみた。食べた。僕らが家にいることを確かめていたようだ。
 しばらくしての朝、今度はとてもきれいな、これまであまり聞いたことのない鳥の声がした。なんだろうと思って物干し台に出ると、あの鳥だった。ついに呼び出されてしまった。こんなきれいな声色を使えるとは、やるな。しかも僕たちの朝の行動(洗濯物を干す)を観察していたと思われる。
 長い付き合いになりそうな気がした。

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この記事のライター

新城 和博

ライター、編集者

新城 和博

1963年生まれ、那覇市出身。沖縄の出版社「ボーダーインク」で編集者として数多くの出版物に携わるほか、作詞なども手掛ける。自称「シマーコラムニスト」として、沖縄にまつわるあれこれを書きつづり、著書に「うちあたいの日々」「<太陽雨>の降る街で」「ンバンパッ!おきなわ白書」「道ゆらり」「うっちん党宣言」「僕の沖縄<復帰後>史」などがある。

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