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お役立ちコラム

本村ひろみの「おきなわ 暮らし散歩」<17>|コノイエプラス

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『春』

小雨続きの花曇り。
いつもの散歩道を歩く。
ぼんやりとした景色の向こうに
水彩絵の具がにじんだような黄色い塊を見つけた。
ボワっと。
湿度が高いので、空気に色が分散されて輪郭が風景に溶け込んでいる。

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鮮やかな菜の花の一群。
匂いに招かれたミツバチが集まっている。
緑と黄色に黒。
淡い点描の春の様子は印象派の世界。
すべてが透明な薄い膜の中。
雨音が周りの音も消していく。

昨年、同窓会のビデオを制作するため
母校の那覇高校へ出かけた。
同級生4人。まるで在校生の父兄のような私たちは
待ち合わせ場所に所在なく立っていた。
正門の位置も学生のころと違っている。
高校の敷地に足を踏み入れるのは確か卒業式以来。
あれから34年の月日がたった。
平良教頭先生に案内されて新しくなった校庭を歩く。
緑に包まれた新校舎。
昔の居場所を探すようにキョロキョロ歩く私たちに
部活の学生が立ち止まって元気よくあいさつしてくれる。
どこからともなく響くトランペットの音。
ネット越しに野球部やテニス部の練習風景を眺めていると、
運動場を走っていたバレー部の女の子たちが笑顔で頭を下げた。
リズムを刻む運動靴のヒモが弾んでいる。

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変わらない放課後の風景。
校舎の隅に
昔使っていた理科室のイスとテーブルが置かれていた。
長方形のテーブルと背もたれのない四角い木のイス。
腰掛けると、座った学生の数だけイスの表面は滑らかになっている。
テーブルの落書きには昭和の名前。
何年何組、出席番号。感情をつづったとりとめもないなぐり書き。
その中に「もうすぐ卒業」という文字を見つけた。
永遠にいられる場所などないと大人になって分かる。

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土ぼこりに混じって足元から雨の匂い。
ひんやりとした廊下に響く笑い声。
ロッカーを閉じる音。
重なり合う靴音。
花束を抱えてアーチをくぐるパステルカラーの卒業の日。
おめでとう!
またね。元気でね。またね。
そしてまた春は巡る。

弥生3月
蕾(つぼみ)の中で眠っている花々。
その眠りから早く起こすように催す雨を「催花雨」という。

春風に背中を押され私たちは新しい季節へ歩みだす。
それぞれの道へ。
それぞれの春へ。

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この記事のライター

本村 ひろみ

フリーパーソナリティー

本村 ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業。
ラジオやテレビのレポーターを経て、ラジオのパーソナリティ、式典や披露宴、イベントなどの司会として活躍中。現在、ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「プラチナ世代の活き方革命」でパーソナリティーを務める。沖縄県立芸術大学大学の修士課程を修了。英国サリー芸術大学に留学し、ファッション・デザイン課マスターコースで学んだ経験を生かし、デザインやイベントのプロデュースにも携わる。
http://cats007.ti-da.net/

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